― 鹿児島県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、むかし。きつつきと雀は姉妹(しまい)だったそうな。
あるとき、きつつきと雀は着物を織ろうとかせ糸を染めていたと。
そしたらそこへ使いが来て、
「親が病気で死にそうだから、すぐに来い」
というたと。
親おもいの雀は、親が病気と聞いて、着物どころではない。
「姉ちゃんすぐに行こ」
というたら、きつつきは、
「なによ、大げさなんだから。そんなにかんたんに死ぬもんですか。私は着物を縫いあげてから行く。美しい着物を着た私を見たら、いっぺんに元気になるわよ」
というて、かせ糸を染め続けたと。雀は、
「じゃあ、私、先に行くね。やっぱり心配だから」
というて、かせ糸を首にかけたまま飛んで行ったと。
きつつきは「妹はほんとに心配性なんだから」といいながら、かせ糸を染めていたと。
雀が親のところへ着いてみたら、親の病気は本当に重くて、今にも命が切れようとしていた。親が寝床から雀を見て、
「おお、ようきてくれた。お前ひとりか。お姉ちゃんは」
ときいたので、雀は、
「お姉ちゃんはきれいなべべを縫いあげてからくるって」
というた。そしたら親は、
「きつつきには、親の死に目にすぐに来ない罰をやらにやぁ」
というて、
「姉には、『山の木の虫をとっては、一(ひと)つは天に、一つは地にあげて、三つ目が自分の口に入るような暮らしをしなさい』というといてちょうだい。いいわね。
雀よ、お前は親孝行だから、村々の米倉を捜して、米を食べる暮らしをしなさい。田んぼの初穂をついばみ、豊作を祝ってやる暮らしをしなさい」
というた。これがゆいごんになったと。
それで雀は初穂をついばみ、米倉に寝て米を食べ、きつつきは山で木にさかさにとまって、木に穴を開けて虫を捜しているのだそうな。
雀が首に白い木綿をまいて、きつつきがかすりの美しい着物を着ているのは、こんなことがあったなごりなんだと。
そしこんむかし。
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「きつつきと雀」のみんなの声
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