― 岩手県 ―
語り 井上 瑤
再話 佐々木 喜善
昔、盛岡(もりおか)の木伏(きぶし)に美(うつく)しい娘(むすめ)があったと。
毎日家の前の北上川(きたかみがわ)へ出て、勢(せい)よく伸(の)びた柳(やなぎ)の木の下で洗濯物(せんたくもの)をしていた。
あるとき、その娘がいつものとうり洗濯に出たまま行方(ゆくえ)がわからなくなったと。
家の人たちや村の人たちは、
「いったいぜんたい、どこへ隠(かく)れてしまったんじゃ。神隠(かみかく)しみたいだ」
と言いあいながら、方々(ほうぼう)をたずね歩いたけどどうしても探(さが)し出すことが出来なかったと。
ところが、二、三日経(た)ってから娘がその柳の木の幹(みき)にたくさんの枝々(えだえだ)で絡(から)まれて、しっかりと抱(だ)かれているのが見つかった。
村の人たちは娘を助(たす)けて家に連れ帰った。
そのあと娘は永(なが)らくぶらぶら病(やまい)にとりつかれて青い顔をしていたが、快(よ)くなってからこう言うた。
あの日の夕方、いつものように柳の木の下で洗濯をしていると、どこからか、見たことのない美しい男が来て抱きついて放(はな)さない。そのうちに何が何だか気が遠(とお)くなって、何とも知(し)らなくなった。
その後(のち)、柳の木は自然(しぜん)に枯(か)れて死んだ。
どっとはらい。
挿絵:福本隆男
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