民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 動物や異類の婿にまつわる昔話
  3. 柳の美男

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

やなぎのびなん
『柳の美男』

― 岩手県 ―
語り 井上 瑤
再話 佐々木 喜善

 昔、盛岡(もりおか)の木伏(きぶし)に美(うつく)しい娘(むすめ)があったと。
 毎日家の前の北上川(きたかみがわ)へ出て、勢(せい)よく伸(の)びた柳(やなぎ)の木の下で洗濯物(せんたくもの)をしていた。

 あるとき、その娘がいつものとうり洗濯に出たまま行方(ゆくえ)がわからなくなったと。
 家の人たちや村の人たちは、
 「いったいぜんたい、どこへ隠(かく)れてしまったんじゃ。神隠(かみかく)しみたいだ」
と言いあいながら、方々(ほうぼう)をたずね歩いたけどどうしても探(さが)し出すことが出来なかったと。


 ところが、二、三日経(た)ってから娘がその柳の木の幹(みき)にたくさんの枝々(えだえだ)で絡(から)まれて、しっかりと抱(だ)かれているのが見つかった。
 村の人たちは娘を助(たす)けて家に連れ帰った。
  そのあと娘は永(なが)らくぶらぶら病(やまい)にとりつかれて青い顔をしていたが、快(よ)くなってからこう言うた。
 あの日の夕方、いつものように柳の木の下で洗濯をしていると、どこからか、見たことのない美しい男が来て抱きついて放(はな)さない。そのうちに何が何だか気が遠(とお)くなって、何とも知(し)らなくなった。

 
 その後(のち)、柳の木は自然(しぜん)に枯(か)れて死んだ。

 どっとはらい。
 
柳の美男挿絵:福本隆男

「柳の美男」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

金看板と頓智(きんかんばんととんち)

むかし、むかし、あるところに韋駄天(いだてん)走(ばし)りの男があった。平地はもとより、山に入ってもキジを獲ったり、兎を獲ったり、ものすごく足が速い…

この昔話を聴く

蜜柑のはじまり(みかんのはじまり)

むかし、むかし、あるところにお寺があって、和尚様がひとり住まわれておらしたと。ところがその和尚様、だんだん年をとられて今にもお迎が来るばかりになったと

この昔話を聴く

夫婦のむかし(みょうとのむかし)

昔、昔の大昔。なんでも、人間ははじめ、夫婦(みょうと)が背中あわせにくっついて生まれてきていたそうな。あるときのこと、大勢の人間たちが集まって、神さ…

この昔話を聴く

現在886話掲載中!