民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 草木の話・動物の由来にまつわる昔話
  3. 梢で啼く烏

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

こずえでなくからす
『梢で啼く烏』

― 岩手県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかしあったと。
 烏(からす)は元々悪たれな鳥だったと。
 人が丹精(たんせい)かけて蒔(ま)いた種子(たね)を掘り返したり、藁屋根(わらやね)の破風(はふ)を荒したり、いたずらばかりしていた。
 神様これにほとほと手を焼いていて、いつか懲(こ)らしめてやろうと思われていらっしゃったと。
 そしたらあるとき、神様のところへ烏がものたずねにやってきた。
 「神様、神様、ちょっくら教えて欲しい事あって来ました。おれ、好きな女烏(めがらす)出来たんで、巣をかけようと思うども、今年は風が荒れますべぇか、荒れなかべぇか。どっちでございますべぇか」
と、お伺(うかが)いをたてたと。 

 
 その年は嵐がたびたび起こる年だったが、神様はわざと、
 「今年は上々の日和(ひより)だ」
と、反対を教えたと。
 これを聞いた烏は喜んで、見晴らしのいい高い木の梢(こずえ)に巣を作ったと。
 いい巣をかけたので、好きな女烏を呼んでこようとしていたら嵐が吹き荒れた。梢にかけた巣は、大揺れに揺れた。女烏は、
 「アホー」
というてあきれたと。


 それからというもの、烏は大風が吹く前になると巣が壊れるのが心配で、梢のまわりを、
 「ガオ ガオ」
と、声からして啼(な)いていたと。
 この様子を見た農家の人たちは、
 「梢に烏群(む)れ啼くは嵐の前兆(ぜんちょう)」
というて、そなえをするようになったと。

 どんとはらい。 

「梢で啼く烏」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

狼と狐と唐獅子と虎の競争(おおかみときつねとからじしととらのきょうそう)

 昔、昔、あったと。  日本(にっぽん)の狼(おおかみ)のところに、天竺(てんじく)の唐獅子(からじし)から腕競(うでくら)べをしよう、といって遣(つか)いがきたそうな。日本の狼は、狐を家来にしたてて、天竺へ行ったと。  天竺では唐獅子と虎が待っていた。

この昔話を聴く

肝だめし(きもだめし)

ある夏の夜のこと、十人近い子どもたちが肝だめしをやろうと大きなお寺の前に集った。 「なんだかお化けが出そうだなぁー」 「平気、平気、お化けなんか出るわけないよ」 「でも、やっぱり、こわいなぁー」子どもたちは、わいわいがやがやさわいでいた。

この昔話を聴く

猫の名(ねこのな)

むかし、むかし、あるところに爺と婆があったと。爺と婆は二人暮らしでさびしいから、猫を一匹もろうてきて飼うていたと。しかし、その猫には名前がついてなかった

この昔話を聴く

現在886話掲載中!