めっちゃさいこうでおもしろかった!もういっかいよみたいくらい。( 10歳未満 / 女性 )
― 岩手県 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志
再々話 六渡 邦昭
むかし、あるところに一軒の宿屋があった。
この宿の主人はとても欲が深く、部屋に忘れもんがあると、みんな自分のものにしてしまうような人だったと。
あるとき、年のころは五十位、くるくる丸い目の旅の人がやって来た。身なりのよい人で、背中に縞紋様(しまもよう)の風呂敷をしょっていた。
「一晩やっかいになりますよ」
「さあ、どうぞ、どうぞ」
主人はにこにこして、旅の人を部屋に案内した。そして帳場に戻り、
『今の客は、そうとう金を持っているようだな。何とか、あの風呂敷包みを獲(と)ることは出来んものか』
と考えた。しばらくして、ひざをポンと打つと、
『そうだ、茗荷を食べさせよう。茗荷を食べると物忘れをするというから、茗荷を食べさせればいい』
と思うた主人は、早速女房を呼んで、
「さっきのお客さんには、茗荷をたくさん食べさせておくれ」
と言々つけた。
女房は言われた通り、夕食には、たあ―んと茗荷を盛りつけて出した。
そうしたら、お客さんは、
「これはうまい、これはうまい」
というて、山盛りの茗荷をみんな食べてしもうた。
挿絵:福本隆男
喜こんだのは宿屋の主人だ。明日はきっと、あの風呂敷包みを忘れて行くに違いない、と思うて、ほくほくしておった。
次の日の朝、お客さんは、女房に、
「きのうの茗荷はとてもおいしかったですよ。どうもお世話になりました」
と言うと、宿を出て行った。
客の帰ったことを聞いた主人は、さっそく客の泊った部屋にかけ込んだ。
ところが、風呂敷包みはどこにも無い。それどころか部屋の隅から隅まで探しても忘れ物はひとつも無かった。
「はてさて、弱ったな。あれほど茗荷を食べさせたのだから、何か忘れ物(もの)があるだろう」
と、よくよく考えてみた。そうしたら、宿賃をもらっていないことに気がついた。何のことはない、お客さんは宿賃を払うのを忘れていったのだ。
主人はあわててお客さんを追いかけた。けれども、追っても追っても追いつけない。
それで会う人ごとに、
「もうし、もうし、年のくるくる目が五十、縞紋様の男をしょった風呂敷を見かけなかったか」
と、尋ねてみたが、笑われるばかりで、とうとうお客さんは見つからなかったと。
だから、あんまり欲が深いと、いいことはないんだよ。
めっちゃさいこうでおもしろかった!もういっかいよみたいくらい。( 10歳未満 / 女性 )
茗荷大好きなんですが・・・欲張りはダメですね!( 40代 / 女性 )
昔、あったど。あるところに雪女がいであったど。 雪女ァ、旅の人ばだまして、殺していだだど。 ある冬の日。 ひとりの男が旅をしていて、沼のあたりまで来たけァ、日が暮(く)れてしまったと。
南部と秋田の国境(くにざかい)に、たった二十軒(けん)ばかりの淋(さび)しい村がある。この村から秋田の方へ超(こ)えて行く峠(とうげ)の上に、狼(おおかみ)の形をした石が六個(こ)並(なら)んでいる。
とんとむかし、たいそう男の子が好きな夫婦がおったそうな。暇(ひま)さえあったら生まれてくる子供の名前を考えておったと。 さて一人目の子供、これが男だったので、あんまり嬉(うれ)しゅうて、つい、“うれしい”という名前をつけた。 そうして二、三年たって、また男の子が生まれた。 さっそく親戚(しんせき)をあつめて、喜(よろこ)べ喜べ、のドンチャン騒(さわ)ぎ。
「茗荷もの忘れ」のみんなの声
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