寺の漢字及び、読み方が違います。 正しくは『永禅寺』(ようぜんじ)です。( 30代 / 男性 )
― 石川県 ―
語り 平辻 朝子
再話 六渡 邦昭
むかしあったと。
ある村のはずれに、化け物が出るというお寺があった。
村の人達はおそろしいもんだから、誰(だれ)もそのお寺には近づかないようにしていた。
あるとき、旅の坊さまがこの村にやって来て、化け物の話を聞かされた。
「この世に化け物なぞ、いるはずがない」
「いやいや本当にいます。今まで何人も化け物退治(たいじ)に行きましたが、みんな次の朝には殺されておりました」
「そうか、それならこれからわしがその寺へ行ってみよう」
「やめなされ、坊さまも化け物に食われますぞ」
村人達がしきりに止めたが、坊さまは笑いながら、
「かまわん、かまわん」
というて、行ってしもうた。
お寺に着いた坊さまは、本堂の真ん中にどっかと座(すわ)り、
「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)、南無阿弥陀仏」
と、お経(きょう)を唱え始めた。
夜になり、あたりが暗くなると、風が吹(ふ)いてきた。すると、どこからか、
「これ、坊主」
と、呼ぶものがある。
坊さまは少しも驚(おどろ)かず、
「お前は誰かな。姿(すがた)を現(あらわ)しなさい」
というた。すると、
「これ坊主、わしの正体を当ててみろ。もし当たったらこのまま逃(に)がしてやる。当たらなかったら、一口で食い殺すぞぉ」
というて、真っ黒な、でっこい化け物が床(ゆか)をひっ掻(か)いて現れた。化け物は、
「ショウソクハッソク、ダイソクニソク、オウコウシテ、ガンハテンニアリ。わしの正体がわかるかぁ」
と問題を出してきた。
坊さまは旅をしながら修行(しゅぎょう)をして来た人だから、見聞(けんぶん)がひろい。すぐに解(と)けたと。
「お前は、カニだ」
と叫(さか)び、錫杖(しゃくじょう)でそいつの頭を力一杯(ちからいっぱい)叩(たた)いた。化け物は、
「ギャアー」
と悲鳴をあげ、泡(あわ)を吹(ふ)いて逃げて行った。
次の朝、心配した村人達は、みなしてお寺へやって来た。おそるおそる、
「旅の坊さま、生きとらすかぁ」
と尋(たず)ねると、本堂からニコニコ顔で現れた。
「化け物は出ませなんだか」
「いやいや、確(たし)かにおった。坊主のわしに問答(もんどう)を仕掛(か)けてきよったわい。『ショウソクハッソク、ダイソクニソク、オウコウシテ、ガンハテンニアリは何だ』というから、わしは『カニー』というて、この錫杖で頭を叩いたら、そいつは口から盛(せい)大に泡を吹いて逃げて行きおった」
「それが何でカニですかいな」
「小足八足は小さい足が八本、大足二足は大きい挟(はさみ)が二本、横行しては横歩き、眼(ガン)は天にありは目が上を向いていること、そんなのは蟹(かに)しかおらんじゃろ」
「なぁるほど」
村人たちが感心して周囲(あたり)を捜(さが)すと、泡らしき跡(あと)が点々とあった。その跡をたどって行くと、裏(うら)山の洞穴(ほらあな)まで続いていた。穴の中で大っきな蟹が一匹、甲羅(こうら)を割(わ)られて死んでいたと。
それからは化け物は出なくなり、誰言うとなく、この寺をカニ寺と呼ぶようになったと。
能登(のと)半島の永禅寺(ようぜんじ)というお寺の話。
なんばみそ あえてくったらからかった。
※音声の語りでは「永禅寺」を『えいぜんじ』と言っておりますが、正しくは「ようぜんじ』です。訂正してお詫び申し上げます。
また「みんなの声」で教えてくださった方、漢字とよみがなを修正しました。本当にありがとうございました!
寺の漢字及び、読み方が違います。 正しくは『永禅寺』(ようぜんじ)です。( 30代 / 男性 )
坊様が謎を解けたのが驚きました!!
むかしむかし、日本に仁王という男がおって、力持ちでは日本一だったと。あるとき、仁王は八幡さまへ行って、「唐の国には、“どっこい”という名の力持ちがいるということだから、わしはそれと力競べしてくるべと思うとるが」と、お伺(うかが)いをたてたと。
「化物寺、謎解き問答」のみんなの声
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