一切の応用が利かない人なんですね。 巻き込まれない限りはコメディーですね。巻き込まれなければ。( 20代 / 男性 )
― 兵庫県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、むかし、あるところにあほな聟(むこ)さんがあった。
ある日、聟さんが嫁(よめ)さんに頼(たの)まれた用をたしに道を歩いていると、火事で大勢(おおぜい)の人達が働いていた。
「ご精(せい)が出ますね」
というて行き過(す)ぎようとしたら、その人達にどつかれた。
家に戻(もど)ってそのことを嫁さんにいうと、
「そりゃあ、いけん。『水の一ぱいも掛(か)けましょか』とでも言うて、手伝うもんじゃ」
と教えられた。
「そうか、そんなもんか」
というて、また道を歩いて行ったら、鍛冶(かじ)屋さんが忙(いそが)しそうに仕事をしていた。火がゴンゴン燃(も)えている。嫁さんに教えられたことを思い出し、用水桶(ようすいおけ)を手に、
「水の一ぱいもかけましょうか」
というて、その火に水をかけた。ジュッパーンと大きな音がして、鍛冶屋の店じゅう灰(はい)かぐらが舞(ま)って、鍛冶屋も聟さんも灰だらけ。
また鍛冶屋にどつかれた。
家に戻って、そのことを嫁さんに話すと、
「そりゃあ、いけん。『向こう槌(づち)のひとつも打ちましょか』とでも言うて、手伝うもんじゃ」
と教えられた。
「そうか、そんなもんか」
というて、また道を歩いて行ったら、今度は夫婦(ふうふ)がつかみあいの喧嘩(けんか)をしているのに出合わした。
「だいたいお前がだな、あ、いてぇ」
「なによ、あんたこそ、あ、いたぁ」
夫婦は髪(かみ)の毛ひっつかみあって、顔は火が出そうなくらい真っ赤だ。嫁さんに教えられたことを思い出し、
「向こう槌のひとつも打ちましょか」
というなり、二人の額(ひたい)をコンコンと叩(たた)いたので、また、夫婦にどつかれた。
家に戻って、そのことを嫁さんに話すと、
「そりゃあ、いけん。『あなたもごもっとも、こなたもごもっとも』というて、分けるもんじゃ」
と教えられた。
「そうか、そんなもんか」
というて、また道を行こうとしたら、嫁さんが、
「用たしはもういいから、今日はたくさんどつかれて疲(つか)れたろ。布団(ふとん)を敷(し)くからからだをやすめて」
というた。
次の日、聟さんは、嫁さんに頼まれた用をたしに、また道を歩いていると、草地で、大きなこって牛が角を合わせてまくりあっているのを見た。
昨日たくさん寝(ね)て元気な聟さん、嫁さんに教えられたことを思い出し、ここぞとばかりに、
「あなたもごもっとも、こなたもごもっとも」
といいながら、二頭のこって牛の間に分け入った。
聟さん、両方から角にまくられて、死んだと。
いっちこたぁちこ。
一切の応用が利かない人なんですね。 巻き込まれない限りはコメディーですね。巻き込まれなければ。( 20代 / 男性 )
死ぬとは思わなかった。びっくり。( 10歳未満 )
なんてタイトル!おもしろそうと聞き始めましたが…びっくり!!!( 50代 / 女性 )
変で驚きました( 10歳未満 / 女性 )
ざっと昔があったてや。あるところに、でこ鼻と、手長と、足長の三人がおったと。でこ鼻はでっかい鼻をしてるし、手長はばかに手が長いし、足長は足が人の何倍…
「あほな聟さん」のみんなの声
〜あなたの感想をお寄せください〜