めちゃくちゃ感動するお話だった。( 10代 / 女性 )
― 岩手県 ―
語り 井上 瑤
再話 平野 直
整理 六渡 邦昭
むがしあるところに、軒端(のきば)コ葺(ふ)く茅(かや)コさえ一本もない爺さまど婆さまがあったどス。
年越しの日に、婆さまはかねがね丹精(たんせい)して溜めでおいだ※糸臍(いとへそ)コをとり出して、
「爺さまし、爺さまし、これでも町ちゃ持ってって、暮の町用ば足してきてお出ェれや」
ど、言った。
爺さまは、それもそんだな、仕方がないど、それば持って町さ行ったが、誰もこの年越しに糸臍コなど相手にして呉(け)ながった。
帰る途中で、これも売れないで困っていだ笠(かさ)売りど出会った。
※糸臍…紡いだ糸を環状に巻いたもの。
笠売りは爺さまば見るど、
「ときにそちらの糸臍売りの爺さまなス、なんぼ売れだどス。師走(つめ)どもなれば誰も彼も忙しいどみえで一笠も売れないが、困ったもんだ。
どうせ売れない同士だらば、おらの笠どその糸臍コ取り替えっコば、し申さねか」
ど、言った。
「そんだな、それも好(よ)がべ」
ど、気の好(え)え爺さまは、笠五つと糸臍コを取り替えて帰るごどにした。
来るが来るが来るど、野中の六地蔵さまが、雪コかぶって頭からぬれて立っていだ。
これを見ると、爺さまは、
「やぁやぁ、お地蔵さまし、それではさぞかし冷たかべなス。ちょうどここに笠を持ってるがら、おあげ申すべ」
挿絵:福本隆男
ど、五つの笠をみんなお地蔵さまにかぶせ、あどの一つのお地蔵さまには、継ぎはぎだらけの自分の古手拭(ふるてぬぐい)コをおかぶせ申して、家(え)さ帰ってきた。
「婆な、婆な、今帰ったじェ」
「あや、爺さまし、糸臍コぁ、なんぼに売れたどス」
「それがさ、駄目だったでェ」
ど、爺さまは、町で笠売りに会って笠ど糸臍コを取り替えたごとや、その笠を雪にぬれでいる野中の六地蔵さまさおかけ申して来たごどなど、こと細かく話した。
「そうスか。それはまだ好え功徳(くどく)してきたごど。そんでァ今年も漬菜コ噛み噛み、湯コ飲んで歳とるべもス」
ど、早ぐ寝でしまった。
ところが夜中頃になるど、表の方で、
「じょいさ、じょいさ」
ど、何が曳(ひ)いで来るような掛声がきこえて来た。
「婆な、婆な、この年越しの晩げェ、どこでが、石でもひく人だぢがあるよだな」
「そんだなス。だんだん、こっちゃ来る様だねぇスか」
「はで、ほんとだ」
ど、言っているうぢに、玄関さ、どさっと何か重たい物ば置いだようば音がした。
「婆な、婆な、今のはおら家の様んだじェ」
ど、爺さまが起ぎで玄関の戸ば、がらり開けで見ると、年越し祝いのお米だの肴(さかな)コだのお金子(かね)だのが、ずっぱり入っている叺(かます)がそごに置いであっで、笠コど手拭コかぶった六地蔵さまだぢが、
「じょやさ、じょやさ」
ど、向うさ行く姿コが見え申したどさ。
これもお地蔵さまへ爺さまが功徳をしたからだどいう話。
どんど払ェ。
めちゃくちゃ感動するお話だった。( 10代 / 女性 )
おもろい( 10歳未満 / 女性 )
昔、盛岡の木伏に美しい娘があったと。毎日家の前の北上川へ出て、勢よく伸びた柳の木の下で洗濯物をしていた。あるとき、その娘がいつものとうり洗濯に出たまま行方がわからなくなったと。
「笠地蔵」のみんなの声
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