欲深いのはよくないですね( 10歳未満 / 男性 )
― 広島県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
なんの昔があったげな。
あるところに長者の家があったげな。
父親が死んでから、母親と二人の兄弟が暮らしとったが、兄は欲張りで、自分以外の者が御飯を食べるのもしゃくにさわるほどだったげな。
そんなことじゃけぇ、父親の代(だい)にはたくさんおった下男も下女も、みんな暇をもろうて帰ってしまい、家はだんだん貧乏になっていってしもうた。
そしたら、なおのこと兄が、弟や母親につらく当るようになった。
弟は、母親を連れて家を出て、昔下男をしとった作爺(さくじい)のところたずね世話になったげな。
弟は、
「早よう、おっ母さんを楽にさしたげよ」
思うて、朝早ようから夜遅うまで畑仕事しとったげな。
ある晩のこと
「これ、起きよ、起きよ」
と言うて、弟を起こすもんがおる。
目をさますと、目の前に、金色にピカピカ光る神さまがあらわれとって、
「あしたの朝、何か入れ物を持って、金噴(かねふ)き明神の広場へ来なさい」
と言うと、スウと消えてしもうたげな。 弟は、不思議なこともあるもんじゃ、と思いながらまた眠ってしもうた。
次の朝、早ように、大きな籠(かご)を持って金噴き明神の庭へ行ってみた。
が、広場にやあ誰もおりゃせん。
ぼんやり立っとったら、
「ここじゃ、ここへ来い」
言うて呼ぶものがある。
まわりを見よると、その声は、大きい石の狛犬(こまいぬ)から聞こえるげな。
おそるおそる近づくと、その狛犬が言うたげな。
「わしの頭を三辺(べん)さすって、金出ろ、言うたら金出て来るけえ、籠いっぱいにならん間に、もう一辺(ぺん)頭をさすりんさい」
弟は、狛犬の口の下に籠を置き、言われた通りにすると、狛犬は、大きい口を開いて、
「オウ」 と、ひと声吠(ほ)えたかと思うと、ガラガラ、ガラガラと大判小判を噴き出したげな。
弟は、もうちいっとで籠がいっぱいになるという前に、狛犬の頭をさすったげな。
そしたら、カチッと口を閉じて、金が出るのが止(や)んだげな。
弟は喜んで、籠いっぱいの大判小判を持って家に戻り、母親と作爺にその訳を話して聞かせたげな。
そいで三人が相談して立派ないい家を建てて、母親と作爺を楽にさしたげたげな。
兄が、弟たちがいい家を建てたいうことを聞いて、すぐにやって来たげな。
「その金はどうしたんなら」
気のいい弟は、金噴き明神の話を全部聞かせてやったげな。
欲の深い兄は、飛ぶようにして家に戻り、四斗樽をかついで金噴き明神へやってくると、弟に聞いたとおりにやったげな。
そしたら、大判小判がザクザク出て来て、たちまち四斗樽いっぱいにしてしもうた。
兄はいい気になって、
「もっと出ぇ、もっと出ぇ」
言うてやっとったげな。
そしたら、大判一枚チャリンと樽からこぼれたあと、金が出るのがピタッと止んだげな。
兄はたまげて、狛犬の口を見ると、喉(のど)に大判が引っかかっとる。
それを取ろうと手を入れたら、ガブリと咬(か)まれてしもうた。どうやっても、こうやってもはずれんのじゃげな。
兄が、オイオイ泣きながら、ふと樽を見たら、大判小判はいつの間にか石に変ってしもうとったげな。
烏(からす)が鳴(な)いたアホー話。
欲深いのはよくないですね( 10歳未満 / 男性 )
むかし、ある年の大晦日のこと。吉四六さんの村では、借金取りが掛売りの貸金を集金しに、家々をまわっておった。家の中からそれを見ていた吉四六さんの女房「貸すほどお金があるっちゅうのも大変だねえ」
むかし、あるところにひとりの爺さまが住んでおったと。爺さまは、面白い昔コ語っては、人を笑わせていたと。ところが爺さまも年も年とて、ある日、ころっと死んでしもうた。
「金噴き明神」のみんなの声
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