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しょうぶゆのゆらい
『菖蒲湯の由来』

― 岐阜県 ―
語り 井上 瑤
再話 大橋 和華
整理・加筆 六渡 邦昭

 昔々、小さなお城(しろ)があったと。
 そのお城に、それはそれは美しいお姫(ひめ)様があったと。

 夜更(よふけ)になると、毎晩(まいばん)、立派(りっぱ)な若侍(わかざむらい)が遊びに来たと。お姫様のおつきの者は、どうも怪(あや)しいと、若侍のはかまの裾(すそ)に針(はり)を刺しておいたと。すると若侍は、その針が刺さって血をたらしながら帰って行った。
 おつきの者がその血のたれた跡(あと)をつけて行ったら、草っ原(くさっぱら)や藪(やぶ)を通って、岩の洞穴(ほらあな)へ入って行ったようだ。
 おつきの者が、これは、いよいよあやしいと思うて、耳をすませて聞いてみたら、中では親蛇(へび)が子蛇に話しているところだった。


 「それみよ、針(はり)の毒(どく)は、蛇の体に入ると体が腐(くさ)ってしまうぞ」
というと、子蛇が、
 「俺(おれ)は死んでも、もうかわりの子供は作ってあるでええ」 
というた。そしたら親蛇は、
 「人間は大変利口なもんであるから、きっと菖蒲酒(しょうぶざけ)を飲ませて、その子供をおろしてしまう」
と話したと。

 それを聞いた姫のおつきの者は、さっそく菖蒲酒を作って、お姫様に飲ませ、その子供をおろしてしまったと。
 それで、今でも五月の節句(せっく)には魔(ま)よけになると言って、屋根の四方(しほう)に菖蒲をさしたり、風呂へ菖蒲を入れたりするようになったのだと。
 そればっかり。

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