民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 動物の恩返しにまつわる昔話
  3. 蟹の恩返し

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

かにのおんがえし
『蟹の恩返し』

― 福岡県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、筑後(ちくご)の国は三池(みいけ)の里に、今山(いまやま)というところがあって、殿さんの大きなお屋敷があったんやと。
 その殿さんには大層(たいそう)かわいらしい姫さんがおらっしゃった。

 あるとき、姫さんがお屋敷内(おやしきうち)の大きな池のほとりで遊んでござらっしゃると、なにやら、ムザリ、ムザリ動くもんがある。
 「あれぇ、ちいっちゃいカニじゃ。手足もこんなにやせてぇ、たよりなげやなぁ」
と言って、お供の者に頼んで、そのカニにごちそうをやんなさったと。
 カニは、それから毎日、姫さんが池のほとりに来るのを待っとって、ごちそうをもろうておったもんだから、一日、一日大きゅうなっていったんやと。

 
 あるとき、お屋敷中のみんなで今山の花見に出掛けなはったと。
 殿さんも家来(けらい)たちも、花や酒に酔って浮かれて、そりゃあもう、にぎやかなこつさわぎまくっておんなさったと。
 そんなすきに、姫さんな、ひとり、ふらふらと離れて小川の淵までやって来なはったんじゃと。
 淵に寝ころび、足を流れにつけて、チャップリ、チャップリ遊んでおらっしゃった。

 そんとき、一匹の大蛇(だいじゃ)が、草にまぎれて姫さんに近づいてきよった。
 姫さんな、むじゃきにしよって気ぃ付かないんやと。
 すぐきわまで近づいた大蛇が、カマ首を持たげて、そろそろ姫さんの首へ咬(か)みつこうかというときじゃった。
 えらい大きなカニを先頭に、たぁくさんのカニたちが、どこからともなくあらわれて、大蛇めがけて飛びついて行った。 
 さぁ、姫さんな、びっくりしなはったわ。見れば、おっそろしか大蛇じゃもん。それに何万匹というカニたちが、まるで阿修羅(あしゅら)のごと、戦っとるんじゃもん。

 
 けんど、ほどなくして、大蛇が三つに切りとられて、はげしゅうのたうちまった。
 三つの身ィそれぞれが、真っ赤な血ば吹き出しながら土の中にのめりこみ、みるみるうちに血の池を三つこさえたと。
 大っきなカニは、姫さんがごちそうをやっとったカニじゃったと。

 こんなことがあってからというもの、今山の衆は、どげなことがあっても、清水(しみず)のカニだけには手もふれず、食べもしないで大事にするようになったんやと。

 それぎんのとん。 

「蟹の恩返し」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

感動

助けてくれた蟹を供養する情ある昔のひとの心根に教えれました 生きとしいけるものに施すことはたいせつですね( 80代以上 / 女性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

山姥と童(やまんばとわらし)

 むがし、むがし。  あるどこに童(わらし)いで、暮(く)れ方に鰯(いわし)焼いでいだど。爺(じ)と婆(ば)もまだ山から帰って来ねぐて、山の方(ほ)さ向かって、  「鰯コ焼げだぞぉ。早よ来(こ)ぉ」 と叫(さか)んだ。

この昔話を聴く

月・日・雷の旅立ち(つき、ひ、かみなりのたびだち)

むかし、むかし、大むかし。お日さまとお月さまと雷さまが、三人そろって旅に出かけた。ところが、雷さまは生まれつき気があらいもんだから、行くところ行くと…

この昔話を聴く

女房を出す戸口(にょうぼうをだすとぐち)

むがすあったじもな。あるどごに夫と女房があったど。夫は、隣の女房が常日(つねひ)ごろ化粧ばかりしているので、ばかにいい女ごに見えただ。惚れだど。家(…

この昔話を聴く

現在881話掲載中!