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たからばけもの
『宝化物』

― 愛媛県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、あるところに、人の住(す)まない荒(あ)れた屋敷(やしき)があったそうな。
 何でも昔は、分限者(ぶげんしゃ)が住んでいたそうだが、どうしたわけか、一家(いっか)みな次々に死に絶(た)えてしもうて、そののちは、だあれも住む人もなく、屋敷と仏壇(ぶつだん)だけが荒れるがままの恐(おそ)ろしげになっておった。
 ある夏のこと、村の若い衆(しゅう)が、肝試(きもだめ)しじゃ言うて、その屋敷で一晩(ひとばん)明かそうということになった。

 
 「出るのは娘(むすめ)だと言うぞ」
 「酌(しゃく)をさせるには、ちょうどええ」
 「べっぴんならええがのう」
と、どぶろくを廻(まわ)し呑(の)みしながら元気ようしていたが、夜もだんだん更(ふ)けて、フクロウがホー、ホー、と啼(な)く時分(じぶん)ともなると、急にまわりが気になりはじめた。
 「お、おい、今、向こうで何か物音がしなかったか」
 「お、おどろかすなよ」
 「しいー」
と、みんなで身を寄(よ)せながら、桟(さん)だけの障子越(しょうじご)しに隣(となり)の部屋をのぞいた。そのとたん、
 「ヒャー」
 「で、で、出たあ」
言うて、みな飛ぶように逃(に)げて行った。
 仏壇の前が、ボーっと青白く霞(かすみ)がかって、だんだんに娘の姿が浮(う)かびあがって来たんだと。
 それ以来(いらい)村人は、この荒れ屋敷のことを化け物屋敷と呼(よ)んで、昼でも近寄る者はいなくなった。

 
 何年かたって、あるとき一人の流れ乞食(こじき)が、化け物屋敷に寝泊(ねとま)りするようになったと。
 乞食は、朽(く)ちかけた仏壇に、朝晩、
 「今日もやっかいになりますで、なんまんだぶ、なんまんだぶ」
と、手を合わせて、チンを鳴らしておったと。
 ある真夜中(まよなか)のこと。
 寝ていた乞食は、妙(みょう)な気配を感じて目をさました。何げなく仏壇に目をやると、仏壇の前には青白く霞がかかっていて、娘の姿が浮かびあがって来たそうな。

 
 顔はぼんやりしているのに、着ている着物の縞模様(しまもよう)ばかりがはっきり見えるので、
 「こりゃ、不思議(ふしぎ)じゃ」
と思うて見ていると、娘は仏壇の前に座(すわ)って、かぼそい声でお経(きょう)をあげてから誰かを呼んだそうな。
 すると、庭(にわ)の方から、ちはやを着た太夫(たゆう)が三人、音もなくスウーと娘の前に出て来た。
 ちはやというのは、神様の前で着る衣(ころも)のことだが、一人は黒色で、一人は銀色、一人は金色のちはやなんだと。
 四人で何やら話をしているふうだったが、やがて三人の太夫が、
 「ははー」
と頭を下げて消えてしもうた。あとには娘だけが残ったと。
 
 
 
※ ちはや・・・神事の際に巫女が袍(ほう)の上に着る白地の単衣。袖口は縫わず、こよりでくくってある。


 あまりの不思議なことに、乞食が、
 「あなたは、いったいどなたなら?」
とたずねると、娘は、
 「私は、この家の一人娘です。両親が亡くなって、ほどなく私も死にましたが、誰もあとを弔(とむろ)うてくれる人がありません。それで、成仏(じょうぶつ)できないままに迷(まよ)うて出て来ては、せめて両親にお経をあげていました」
と言う。そして、
 「村の人たちに気がついてもらいたかったのです。あなたは、ようここへ泊って下された。お経もあげてくれた。礼(れい)を言います。おかげで両親の元へ成仏出来そうです。


 先ほどのちはやを着た太夫は、庭に埋(う)めてある銅(どう)と銀(ぎん)と金の化身(けしん)です。あれをあなたにあげますから、あとを弔うて下さい。お願いします」
 こう言うと、娘の姿は消えてしもうた。 夜(よ)が明けてから、乞食が庭を掘(ほ)ると、本当に銅と銀と金が出た。
 乞食はたいそう金持ちになって、あとあとこの一家を供養しながら、一生安楽(あんらく)に暮らしたそうな。
 
  さん候(そうろう)。

「宝化物」のみんなの声

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驚き

凄い!私もこんな経験してみたいわ♪( 10代 / 女性 )

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