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ゆうれいいど
『ゆうれい井戸』

― 千葉県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤

 むかし、と言ってもそんなに古いことではない。君が小学生なら、君のお爺さんお婆さんにあたるお人が、まだ子供時代のころだ。
 その頃日本は戦争をしていて、あちこちに連隊(れんたい)の駐屯地(ちゅうとんち)といって、兵隊(へいたい)がたくさん集まっているところがあった。
 千葉県のある連隊にひとりの兵隊がやってきた。
 その兵隊は、美しい娘と結婚の約束をしたばかりだった。


 あるとき、その兵隊に連隊駐屯地の見張(みはり)り番がまわってきた。
 兵隊は、娘に、夜になったら見張り番の場所に忍んでくるように連絡をした。そこなら、誰にも見つからないで会うことが出来る。
 兵隊は見張り番をしながら、娘のあらわれるのを待った。
 
ゆうれい井戸挿絵:福本隆男


 今来るか、今来るかと待ったが、いくら待っても娘はあらわれない。
 そのうちに見張り番の交代(こうたい)のときがきてしまった。兵隊は、
 「またいつか会えるだろう」
と、つぶやいて、しかたなく宿舎へ戻って行った。
 それから少しして、娘がその場所へやって来た。実は、娘に急の用事ができて、約束の時間に来れなかったのだった。
 夜中のことだし、兵隊は皆同じ服を着ているから、見張り番が交代したことなど、娘にはわかりようもない。
 娘は建物(たてもの)の陰(かげ)から、そおっと婚約者(こんやくしゃ)の名前を呼んだ。


 そうしたら
 「誰かあ」
という大きな声が返ってきた。
 娘は恥ずかしくて、すぐには返事ができなかった。すると続けて、
 「誰かあ、そこにいるのは誰かあ」
と見張り番の兵隊が叫(さけ)んだ。
 こんどは婚約者の兵隊がふざけているのだと思って、返事をしなかった。そして建物の陰からそおっと顔を出した。

 
ゆうれい井戸挿絵:福本隆男

 ズトーン
 見張り番の兵隊は、いきなり鉄砲(てっぽう)をうった。


 軍隊では三度誰何(さんどすいか)しても返事のないときには撃(う)ち殺してもよいということになっていたのだった。
 殺された娘は、古い井戸の中へ投げこまれたと。
 それからというもの、夜になると、古い井戸の中から女の幽霊(ゆうれい)が出るようになったそうな。
 
 おしまい。

「ゆうれい井戸」のみんなの声

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