民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 狐が登場する昔話
  3. あくやのしろど

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

『あくやのしろど』

― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
再話 今村 泰子

 むかし、あるところに『あくやのしろど』ていう仲の好(え)え夫婦(ふうふ)いてあったと。
 して、どっち死んでも七年間は後添(のちぞえ)貰(もら)わねことに約束したわけだ。
 したけ、嬶(かか)さんだ人死んでしまったと。お父さん、まんずお母さんに死なれたっけ、たいした不自由で、難儀(なんぎ)してたと。
 友達方、毎日、後添えの嬶さん貰えとすすめにくるわけだ。
 「なんと、あの嬶とだば、七年間は後添え貰わぬ事に約束してあった」
と、言ったども、あまり友達にすすめられるんてかに、とうとう仕方なく、後妻(あとかか)貰ったわけだ。
 それからていうもの、毎晩げ、魂(たましい)来るとナ。

 
 「あくやのしろどは うちにか
  七年待てとの お約束  カラン、カラン」
て、来るわけだ。
 あまりおっかねくて、おっかねくて、友達さ魂来るとてしゃべったと。
 「魂なんて来るもんだてか。きっと狐(きつね)かむじなに相違(そうい)ない」
て、言って、その晩(ばん)げ、皆して待っていたと。
 したけ、魂きたわけだ。
 「あくやのしろどは うちにか
  七年待てとの お約束  カラン、カラン」
て、真白な着物着て来て言うわけだ。

 
 皆どてんしたども。
 「それっ」
て、かかっていって、ぶっ殺してしまったと。
 して、
 「これヒャ、化物だこったば、朝日さ照(て)らせば分かる」
とて、朝日の昇(のぼ)るの酒コ呑(の)んで待って、して、朝日さ照らしたけ、古し狐(きつね)であったと。
 それから、魂来ねぐなったと。

  とっぴんぱらりのぶう。

「あくやのしろど」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

延命地蔵様と雪女(えんめいじぞうさまとゆきおんな)

昔、あったど。あるところに雪女がいであったど。  雪女ァ、旅の人ばだまして、殺していだだど。  ある冬の日。  ひとりの男が旅をしていて、沼のあたりまで来たけァ、日が暮(く)れてしまったと。

この昔話を聴く

鷹にさらわれた児(たかにさらわれたこ)

昔、駿河(するが)の国、今の静岡県の安倍というところに、亭主(ていしゅ)に死なれた母親と二才の赤ん坊がおったそうな。母親は、毎日赤ん坊をおぶってはよそのお茶摘みを手伝って、やっと暮らしておったと。

この昔話を聴く

狐の恩返し(きつねのおんがえし)

昔、あるところにおっ母さんと息子とが暮らしていた。おっ母さんはなが患いの病人で、息子はまだまだ子供だったと。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!