民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 妖怪と怪談にまつわる昔話
  3. あぐばんば

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

『あぐばんば』

― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
再話 今村 泰子
整理 六渡 邦昭

 土炉(じろ)の灰(あぐ)を悪戯(えたずら)して掘るど、その穴がら 灰ばんば 出てくるぞ。

 昔(むがし)、あったけど。
 隣の隣の村さ、灰ばんば居(え)たけど。え(い)つも灰の下さ入(へ)ぇっていで、穴あげるどすぐ出て来るなだど。
 その灰ばんばでば、眼無(まなぐね)ぐで鼻と口ばかり。
 その口と云(ゆ)っでも、頭(あだま)のてっぺんさあって上の方さ向いでいるなだど。
 して、毎年(まえどし)、若(わげ)ぇ娘をさらって、自分の家さ連れで行って食ってしまうなだけど。
 

 
あぐばんば挿絵:福本隆男
 
 して、その村さ今年十八なるめんけ娘いたけどナ。とうとう、灰ばんばに見(め)つけらぇでしまたど。
 父(とど)と母(あば)、ド心配(しんぺ)して、娘を土炉のあるどころがら、ずっと離れだどごろさ隠(かぐ)すどてしたなだど。したば娘、
 「ンだでも、何時(えず)か誰れかが灰ばんばを退治(てえじ)さねば駄目だけ、俺行って退治して来(く)がら一枚石ど餅、用意してくれ」
 どて、云(ゆ)ったなだど。

 
 父も母も仕方無ぇどて、一枚石と餅ば娘の背中さ背負(しょわ)せで、灰ばんばを待っていたなだど。
 灰ばんば、ようろと来だ。
 めんけ娘、連れらえで灰ばんばの家さ行(え)ったど。
 行ったば、灰ばんば、
 「まんず 風呂たけ」
 どて、云ったなだど。めんけ娘、風呂わかしておいたど。したば今度(こんだ)、
 「土炉さ、火ィたげ」
 どて、云うけど。そえでめんけ娘、そっと一枚石を土炉の中さ入(え)れでおいだど。そのうぢ今度、
 「餅焼け」
 どて、云うけど。そごで、背中がら餅を下ろしていたば、
 「餅、食しぇれ」
 どて、頭の上の口、アングリ開げだど。
 

 
 今だ、ど思で、土炉の中さ入れでおいだ一枚石を、その口さ、ドスーンど入れでやっだど。したば、灰ばんば、
 熱ちじゃ アンアン
 熱ちじゃ アンアン
 熱ちじゃ 熱ちじゃ
 アン アン アン
 どて、泣ぎながら風呂の方さ行くどこだっけが、熱くしておいた風呂の湯を、灰ばんばさぶっかけだど。灰ばんば、
 熱ちじゃ 熱ちじゃ。
 アン アン アン
 どて、叫びながら、死んでしまたけど。

 とっぴんぱらりのぷう。

「あぐばんば」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

おっつー笑( 10歳未満 / 男性 )

楽しい

あぐばんばの死に方はかわいそうなものの、村の娘たちを食べようとしたし、ざまをみろ(笑)( 20代 / 男性 )

怖い

残酷な気がする‥‥

こんなおはなしも聴いてみませんか?

ハチとサルとカメ(はちとさるとかめ)

むかし。ある若者が旅に出た。そして道を歩いていたら、子供がハチに紐(ひも)をつけて遊んでいる。若者はかわいそうに思うて、「銭(ぜに)をやるから、そのハチをわしにくれんか」と言うて、ハチを助けてやった。

この昔話を聴く

酸漿(ほおずき)

昔、ある旅人が山の中を旅していて、一軒の家を見つけてそこに宿(やど)をとったと。翌朝、起きて畑を見たら、美しい酸漿(ほおずき)がたくさん紅(あか)く…

この昔話を聴く

家督ゆずり(かとくゆずり)

 むかし、あるところに、三人の息子を持った分限者がおったと。あるとき、分限者は三人の息子を呼んで、それぞれに百両の金を持たせ、「お前たちは、これを元手にどんな商いでもええがらして来い。一年経ったらば戻って、三つある倉の内をいっぱいにしてみせろ。一番いいものをどっさり詰めた者に、この家の家督をゆずる」

この昔話を聴く

現在886話掲載中!