おっつー笑( 10歳未満 / 男性 )
― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
再話 今村 泰子
整理 六渡 邦昭
土炉(じろ)の灰(あぐ)を悪戯(えたずら)して掘るど、その穴がら 灰ばんば 出てくるぞ。
昔(むがし)、あったけど。
隣の隣の村さ、灰ばんば居(え)たけど。え(い)つも灰の下さ入(へ)ぇっていで、穴あげるどすぐ出て来るなだど。
その灰ばんばでば、眼無(まなぐね)ぐで鼻と口ばかり。
その口と云(ゆ)っでも、頭(あだま)のてっぺんさあって上の方さ向いでいるなだど。
して、毎年(まえどし)、若(わげ)ぇ娘をさらって、自分の家さ連れで行って食ってしまうなだけど。
挿絵:福本隆男
して、その村さ今年十八なるめんけ娘いたけどナ。とうとう、灰ばんばに見(め)つけらぇでしまたど。
父(とど)と母(あば)、ド心配(しんぺ)して、娘を土炉のあるどころがら、ずっと離れだどごろさ隠(かぐ)すどてしたなだど。したば娘、
「ンだでも、何時(えず)か誰れかが灰ばんばを退治(てえじ)さねば駄目だけ、俺行って退治して来(く)がら一枚石ど餅、用意してくれ」
どて、云(ゆ)ったなだど。
父も母も仕方無ぇどて、一枚石と餅ば娘の背中さ背負(しょわ)せで、灰ばんばを待っていたなだど。
灰ばんば、ようろと来だ。
めんけ娘、連れらえで灰ばんばの家さ行(え)ったど。
行ったば、灰ばんば、
「まんず 風呂たけ」
どて、云ったなだど。めんけ娘、風呂わかしておいたど。したば今度(こんだ)、
「土炉さ、火ィたげ」
どて、云うけど。そえでめんけ娘、そっと一枚石を土炉の中さ入(え)れでおいだど。そのうぢ今度、
「餅焼け」
どて、云うけど。そごで、背中がら餅を下ろしていたば、
「餅、食しぇれ」
どて、頭の上の口、アングリ開げだど。
今だ、ど思で、土炉の中さ入れでおいだ一枚石を、その口さ、ドスーンど入れでやっだど。したば、灰ばんば、
熱ちじゃ アンアン
熱ちじゃ アンアン
熱ちじゃ 熱ちじゃ
アン アン アン
どて、泣ぎながら風呂の方さ行くどこだっけが、熱くしておいた風呂の湯を、灰ばんばさぶっかけだど。灰ばんば、
熱ちじゃ 熱ちじゃ。
アン アン アン
どて、叫びながら、死んでしまたけど。
とっぴんぱらりのぷう。
おっつー笑( 10歳未満 / 男性 )
あぐばんばの死に方はかわいそうなものの、村の娘たちを食べようとしたし、ざまをみろ(笑)( 20代 / 男性 )
残酷な気がする‥‥
むかし。ある若者が旅に出た。そして道を歩いていたら、子供がハチに紐(ひも)をつけて遊んでいる。若者はかわいそうに思うて、「銭(ぜに)をやるから、そのハチをわしにくれんか」と言うて、ハチを助けてやった。
むかし、あるところに、三人の息子を持った分限者がおったと。あるとき、分限者は三人の息子を呼んで、それぞれに百両の金を持たせ、「お前たちは、これを元手にどんな商いでもええがらして来い。一年経ったらば戻って、三つある倉の内をいっぱいにしてみせろ。一番いいものをどっさり詰めた者に、この家の家督をゆずる」
「あぐばんば」のみんなの声
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