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はちとさるとかめ
『ハチとサルとカメ』

― 大分県 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志

 むかし。
 ある若者(わかもの)が旅に出た。そして道を歩いていたら、子供がハチに紐(ひも)をつけて遊んでいる。若者はかわいそうに思うて、
 「銭(ぜに)をやるから、そのハチをわしにくれんか」
と言うて、ハチを助(たす)けてやった。
 しばらく歩いていたら、また子供が大勢(おおぜい)よっている。近づくと、子供達がサルを縄(なわ)でしばっていじめていた。若者はかわいそうに思うて、
 「みんな、銭をやるから、そのサルをわしにくれんか」
と言うて、サルを助けてやった。

 
 また、どんどん歩いていたら、子供が大勢よっている。今度は子供達がカメを裏返(うらがえ)しにしていじめていた。若者はかわいそうに思うて、
 「みんな、銭をやるから、そのカメをわしにくれんか」
と言うて、カメを助けてやった。
 
 若者は、もう銭はみんな無くなってしまったが、それでも、てくてく歩いていると、長者(ちょうじゃ)の家の前に、立札(たてふだ)が立っていた。立札には、
 (大川の向(む)こうにあるナシを取ってきた者を娘(むすめ)の婿(むこ)にする)
と書いてあった。若者は、
 <なーんだ、そんなことか。よーし、わしがナシを取ってこよう>
と思うて出かけた。

 
 ところが、行って驚(おどろ)いた。なんと海のようなでっかい川だ。
 「こりゃ、だめだ。とても渡(わた)れん」
 そうしたら突然(とつぜん)、川の中からカメが現(あら)われた。若者はそのカメの背中にのると、なんなく大川を渡ることができた。
 ところが、見たこともないような大きなナシの木だったので、若者は、
 「こりゃ、だめだ。とても登れん」
 そうしたら、サルが現われて、チョッチョッチョッと木に登って、ナシを一つもいできてくれた。
 若者はそのナシを持って、またカメの背中にのると、大きな川を渡ってきた。

 
 そして長者のところへナシを持って行ったら、長者は、
 「そこに娘が三人おる。どれがわしの娘だか分かるか」
と、難題(なんだい)を出した。初めて見る上に、三人とも同じ着物を着ているから、どれが長者の娘だか分らん。若者が困(こま)っていると、ハチが一匹(いっぴき)飛んできた。そして、若者の耳もとで、
 「中の娘、ブーン。中の娘、ブーン」
と教えてくれた。若者が、
 「中の娘だ」
と答えると、その通りだったので、長者の娘の婿になることができた。
 それで、若者は、一生幸せに暮らしたそうな。
 情は人のためならず、とはよく言ったものだなあー。

  もうすこし、こめんだんご。

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