― 長崎県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、むかし、あるところに三匹の猿がおったと。
三匹の猿は栗山へ栗拾いに出かけた。
ところが、いくら探しても栗が見つからない。
あっちこっち探して、ようやく、たったひとつ拾った。
「俺(お)らが拾ったものだから、これは俺らのだ」
「いや、俺らが先に見つけたから俺らのだ」
「いやいや、俺が二人を栗拾いに誘(さそ)ったのだから、これは俺のだ」
「俺らのだ」
「俺らんだ」
「俺のだぁ」
と、ひとつの栗をめぐって、たがいにゆずらないのだと。
そのうち、
「さて、これはやっかいなことになった。どげんしたらよか」
と言って、相談を始めたと。そして、一番先に生まれた者が食べることにしようと決まった。
まず一匹の猿は、
「俺らは、近江(おうみ)の湖が、まだ茶碗の底ぐらいしか水がたまってない時に生まれた」
と言った。
次の猿は、
「俺らは、富士の山が、まだ帽子(ぼうし)くらいの高さの時に生まれた」
と言った。
さて、残ったこいつは何と言うかと思って、三番目の猿を見ると、三番目の猿は急にシクシク泣き出した。
「どぎゃんした」
「びっくりしたばいな」
と先の二匹が言うと、
「うん、俺はちょうどその頃、生まれた子猿を死なせてしもうた。長いこと忘れとったが、お前たちの言った言葉で思い出したですたい」
と言ったと。
それで、この猿が一番先に生まれたということになって、栗の実を食べることになったと。
こりぎりぞ。
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むかし、むかし、九州のずっと南にある喜界(きかい)ガ島(じま)というところに、二人の王さまがおったそうな。 アラキ王とシドケ王といって、ふたりとも、大層(たいそう)力持ちの王さまだったと。
「長生きくらべ」のみんなの声
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