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つき、ひ、かみなりのたびだち
『月・日・雷の旅立ち』

― 長野県 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志
再々話 六渡 邦昭

 むかし、むかし、大むかし。
 お日さまとお月さまと雷さまが、三人そろって旅に出かけた。
 ところが、雷さまは生まれつき気があらいもんだから、行くところ行くところであばれ回ってしょうがない。どこの町へ行っても、
 「雷さまがきたぞ―」
 「へそをかくせ―」
 「早くにげろ―」
と、みんなに、こわがられてしまう。
 お日さまとお月さまは、いいめいわくだった。雷さまといっしょだと、何もしないのにきらわれる。それで、お日さまとお月さまは、雷さまと旅をするのが、だんだんいやになってきた。

 
 ある町についたとき、「今夜は、ここに泊まろう」と、いうことになって、三人は、一けんの宿屋に泊まることにした。
 すると雷さまは、
 「どうれ、ひとあばれしてくるか」
というと、外に出て行って、ピカッと光ると町はずれの大きな木を、バリバリッ、メリメリッと、たおしてしまった。
 お日さまとお月さまは、宿で相談をした。
 「もう、雷さにはがまんできん。明日からは二人で旅をしょう」

 「そうしょう、そうしょう。あんなあばれ者はおいて行こう」
 次の日、お日さまとお月さまは、雷さまを置いて、朝早く宿を立って行った。
 雷さまは朝ねぼうなので、ぐっすりねこんでいる。


 雷さまがようやく目をさましたころには、あたりは、もうとっくに明るくなっていた。ねむい目をこすりながら部屋の中を見回すとお日さまとお月さまがいない。
 「きのうの夜は三人で寝たのに、わし一人しかいない。おかしいなあ、二人はどこへ行ったんだろう」
 雷さまは、宿の主人をよんだ。
 「お日さまとお月さまはどうした」
 「はい、お日さまもお月さまも、ずっと前にお立ちになりました」
 それを聞いた雷さま、
 「そうか、う―ん。月日の立つのは早いもんだ」
 宿の主人は、おそるおそるたずねた。
 「あなたさまは、いつお立ちになりますか」
 すると、雷さまは、すましてこう言うた。
 「おれは雷だから、夕立ちだ」

 それっきり。

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