― 宮崎県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、あるところにバカ聟(むこ)どんがあった。
ある日、嫁(よめ)さんの実家(じっか)から、
「こんど、ふすまが貼(は)れたから見に来るように」
という報(しら)せが届(とど)いた。
それで、嫁さんがこっそり、ふすまの絵(え)を見に行ったと。
ふすまには梅(うめ)と鶯(うぐいす)の絵が画(か)いてあった。見届(みとど)けて戻(もど)った嫁さんは、バカ聟どんに、
「あんた、実家のふすまには梅と鶯の絵が画かれています。向(む)こうへ行ったらお父っつぁんは、必(かなら)ず『どう思うかね』と聞くにきまっています。そしたらあんたは、『りっぱに貼れましたなあ。こりゃ梅に鶯じゃが。いや、めでたい』と、こうお答(こた)えなされ」
と、教(おし)えたと。
バカ聟は嫁さんと一緒に嫁さんの実家を訪ねたと。
そしたら、嫁さんのお父っつぁんが、
「どう思うかね」
と聞いてきた。バカ聟は、
「りっぱに貼れましたなあ。こりゃ梅に鶯じゃが。いや、めでたい」
というた。
そしたら、嫁さんのお父っつぁんは、
「ほほう、まわりがバカじゃ、バカじゃいうが、何と何と、ちいっともバカじゃねえわい」
と、聟どんをえらく誉(ほ)めたと。
バカ聟どんは、嫁さんと一緒に沢山(たくさん)ごちそうになって帰ってきたと。
それから幾日(いくにち)が経(た)って、嫁さんの実家からまた報せが届いた。お父っつぁんの具合(ぐあい)が急(きゅう)に悪くなったそうな。
「そりゃ、見舞(みま)いに行かにゃあ」
ということになって、嫁さんとバカ聟どんはとるものもとりあえず、実家に行った。
あんまり、あわただしく出掛(でか)けたもので、こんどは、嫁さんもさぐりをする間が無かった。
実家に行ってみたら、親爺(おやじ)どんは、足をぶっとくはれらかして、うんうんうなっていた。
バカ聟どん、それを見て、
「いやあ、立派にはれましたなあ、こりゃ梅に鶯じゃが。いや、めでたい」
と、こういうたと。
親爺どんが、あきれて、
「やっぱりあいつはバカ聟じゃあ」
と、いうたと。熱がもっと出たと。
こりぎりの話。
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昔、あったと。鶉(うずら)と狸(たぬき)があったと。 あるとき、鶉と狸が道で出合ったと。鶉が、 「狸どん、狸どん。今日はお前に殿(との)さまの行列を見せてやろうと思うが、どうだ、井ぐいに化けないか」 と、狸にもちかけた。
むかし、あるところに婆さまがあったと。 婆さま、田んぼへ行って草取りしたと。 昼どきになったので弁当を食うていたら、一匹の狐(きつね)が田んぼの畔(あぜ)の上をゆっくりゆっくり歩いて近づいてきた。
「バカ聟に梅と鶯」のみんなの声
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