― 宮城県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、むかし、あるところに蟻(あり)と蜂(はち)があったと。あるとき道端(みちばた)のタンポポの花のてっぺんで蟻と蜂が出逢(あ)った。
「やあ、蜂」
「やあ、蟻」
って、あいさつして語りあっていたら、ときは春、あんまりにもうららかだから、どこかへ旅をしようかということになったと。
蜂は空をブンブン飛びながら、蟻は地面をせっせ、せっせと足動かして行ったと。
「蟻、アリ、おめ、なかなか足が速(はや)いな」
「蜂、お前(め)、8(はち)の字に行ったり来たりして俺(お)らに合わせてくれているども、くたびれたべ」
って、ちょこっとの間(ま)休んで、また旅したと。
いくがいくがいくと、でっかい魚が道に落ちてあった。
さて、何の魚かなあ、って、旅の人が来たから聞いたら、
「こいつは鯛(たい)っていう魚だ」
って、教えてくれた。蜂が、
「いいもの見つけたなあ。俺(おれ)たち二人で拾ったものだから俺たちの物(もん)だ」
って、言うたら、蟻が、
「なに、俺らが這(は)って来て、一番に見つけたから、俺らの物だ」
って、言うた。そしたら蜂は、
「なんだよ、そんなこと言うか、俺は空から先に見つけてたぞ。俺のもんだべ」
って、けんかになったと。
そんだら弘法(こうぼう)さまのところへいって、どっちの物だかお聞きしてみよう、ということになり聞いたと。
そしたら弘法さま、
「そうだな、拾ってありがたかったべ、ありがたいだから、鯛は蟻の物だな」
って、おっしゃられた。
蟻は喜(よろこ)んで、どこかへ運んで隠(かく)したと。
また、蟻と蜂は旅した。あっちを見、こっちを見して、旅は面白いなあって言っていたら、夏が過ぎて秋になったと。今まで咲(さ)いてた花も枯(か)れて、涼(すず)しくなった。それでも、いくがいくがいくと、また、見たこともない魚が道に落ちていた。旅の人に聞いたら、
「こいつは鰊(にしん)っていう魚だ」
って教えてくれた。蟻がまた欲(よく)たれて、
「おらが先に走ってきて見つけたんだから、こいつも俺らのだ」
って言うた。そしたら蜂が、
「この前は、お前が鯛とったべ。鰊まで、またお前がとることなかべ」
って、けんかになったと。
そんだら弘法さまのところへ行って、どっちの物だか、お聞きしてみよう、ということになり、聞いたと。
そしたら、弘法さま、
「そうだな、これは初鰊(はつにしん)だな。初めてとれた鰊だから蜂の物だ。はちにしんだ」
って、おっしゃられた。
蜂は喜んで、どこかへ運んで隠したと。
蟻と蜂は、
「お前はアリガタイだす」
「お前はハチニシンだす」
って言うて、また、仲よく旅したと。
えんつこ もんつこ さげぇた。
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昔昔のあるとき、和泉の国の岡田浦で鯛とふぐが一緒に漁師の網にかかって死んでしまったと。鯛とふぐは連れだって西の方へ歩いて行った。三途の川も渡って、なおも歩いて行くと・・・
「蟻と蜂の旅」のみんなの声
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