― 高知県 ―
語り 井上 瑤
再話 市原 麟一郎
構成 六渡 邦昭
資料 土佐の笑いばなし 市原 麟一郎編
一声社
南国土佐では「ほらふき話」を「とっぽう話」という。土佐の「とっぽう話」は、とにかく陽気(ようき)で底ぬけに明るい。じめじめした暗さや、意地悪いたくらみといったものがない。
「とっぽう話」の主人公、「とっぽう野郎」は、みんな話術(わじゅつ)が達者だ。数多い「とっぽう野郎」の中から、マエノ泰平(たいへい)の話を二題。
「雀退治(すずめたいじ)」と「キュウリの舟」をしよか。
挿絵:福本隆男
わしが、炭山(すみやま)へ行こうと思うて、朝、弁当を食うて出かけたところ、裏(うら)の竹ヤブで雀がめっそうやかましゅうに啼(な)きよったき、そこで家へ去(い)んで鉄砲を持ってきて、一発うちこんじょいた。
ほいて山へ行って、晩方、去(い)にしなに竹ヤブを見たら、えらいことに雀がモミゾウケに二杯も死んじょった。
朝、一つ撃(う)ちこんじょった玉が、竹へ、そち当たり、こち当たりして、パチパチ、パチパチいいよった。それで雀が死んじょったがじゃが…玉は晩方になって跳(と)び方が弱ってのう、パッチ、パッチいいよったわえ。
わしが若いころ、太郎丸の畑へキュウリを作っちょったわえ。しっかりコヤシをやって、精だいて世話しよったところが、なんぼうでもキュウリがなった。
そのうちの一つが、朝に晩に見る見るうちに太って、三間(さんげん)、約五メートルばぁの長さになった。
取ってこようと思うても、よう取ってこれんようになったき、木挽(こびき)をやとうて、まん中から二つにひき割ってもろうた。
そうして、中のみをえぐりのけたところが、舟が二ハイに出来た。
そこで近所の人をやとうて、下の大川へかいておろした。
ほいて、魚釣りの好きな人を集めて、七輪(しちりん)、庖丁(ほうちょう)、酢、しょう油、酒…そんなもんを積み込んで、大川を下って宇佐(うさ)の沖へカツオを釣りに行った。
挿絵:福本隆男
この日は、なんぼうでもカツオがとれた。
そこで舟の中でタタキを作って、舟のあちこちを削っては入れて食うた。
あれぐらい、うまいカツオのたたきを腹一ぱい食うたことはなかったのう。
むかしまっこう 猿まっこう。
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昔、豊後(ぶんご)の国、今の臼杵市野津町大字野津市(うすきしのつまちおおあざのついち)というところに、吉四六(きっちょむ)さんという面白い男がおった。
昔、あるところに、ちゅうごく忠兵衛(ちゅうべえ)さんという人があった。なかなかの善人(ぜんにん)だったと。ある冬のこと。その日は朝から雪が降って、山も畑も道も家もまっ白の銀世界だと。寒うて寒うて、だあれも外に出ようとせんかったと。
「とっぽう話 二題」のみんなの声
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