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ふくのかみがござった
『福の神がござった』

― 高知県 ―
語り 井上 瑤
再話 市原 麟一郎

 とんとむかし、土佐(とさ)の安田の奥(おく)の中山に、貧乏(びんぼう)な男がおったそうな。
 なんぼ働いても暮(く)らしがようならんき、てっきり貧乏神に食いつかれちょると思いよった。
 ところが、その男の隣(となり)におんなじような貧乏な家があったが、不思議なことに、二、三年しよると急に暮らしがようなったと。
 ほんで男は、ひょっとしたら、貧乏神を追い出したかもしれんと思うて、隣の家へ行って、
 「おまん、どうやって貧乏神を追い出したぜよ。すまんが教えてくれんか」
いうて頼(たの)むと、隣のひとは、
 「かんたんなことじゃ、家の戸口にこう書いちょけ。“ござったりや、ござったりや 福の神がござった”と、こうじゃ。かんたんじゃろが」
と教えてくれたそうな。
よろこんだ男は、さっそく習うたとおりに書いて、戸口へ貼(は)りつけておいたと。


 やがて、一年たち、二年たった。けんど暮らしは一向にようならん。あいかわらずの食うや食わずの貧乏暮らし。とうとう三年目に、しびれを切らして隣の家へ行ったと。
 「おまんに教えてもろうたとおりにやったけんど、一向に福の神は来ざったが」
 「そりゃ、おかしいのう。来ないかんはずじゃに。どれ、ひとつ書きつけを見せてみい」
 そこで、書いたものを持って、隣の人に見せたと。そしたら、
 「こりゃいかん。これじゃお前(ま)ん、来(こ)んはずよ。“ござった”の“こ”にボチがついちゃせんじゃりか」と、いうきに、よう見てみたら、なるほど、
 「こざったりや こざったりや 福の神がこざった」
と、書いてあったそうな。
 
 むかしまっこう さるまっこう
 さるのつべは ぎんがりこ。

「福の神がござった」のみんなの声

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驚き

「ござった」を「こざった」と書き間違えたことがこの話の重要なポイントなのですが、「ござった」ではなかったから意味が通らず暮らし向きがよくならないままだったのでしょうか。来る+否定の「こ-ざる」ともとれるような気もします。( 20代 / 男性 )

驚き

その方法で、貧乏神おいはらえるの‼︎( 10歳未満 / 男性 )

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