小僧さんがとっても素直で癒されました。こんな心でいたいなぁと思います。( 20代 / 女性 )
― 石川県 ―
語り 平辻 朝子
再話 六渡 邦昭
とんとむかし。
あるお寺に、たいそう鮎(あゆ)の好きな和尚(おしょう)さんがあったと。
ところが、お坊(ぼう)さんは魚や肉を食べてはいけないことになっていたから、和尚さんはいつも、小僧(こぞう)さんに隠(かく)れてアユを食べていた。
ある日、和尚さんがアユを食べていたら、小僧さんに見られてしもうた。小僧さん、
「和尚さん、それは何や」
ときくと、和尚さんは、
「これは、なんじゃ、その、そうそう、カミソリというもんじゃ。ほれ、よう光っとるじゃろ」
と、うそをついた。
次の日、和尚さんは馬に乗って法事(ほうじ)に出掛(でか)けたと。小僧はそのうしろから和尚さんの袈裟(けさ)を持ってついて行った。すると、途中(とちゅう)に川があって、たくさんのアユが泳(およ)いでいた。小僧さんは大声で、
「和尚さん、和尚さん、ほら、川ん中にカミソリが泳いどる」
と言うた。そしたら、和尚さんは困(こま)って、
「小僧、見ること聞くこと、何でもしゃべらんもんや、だまってついてこい」
と、しかりつけて、さっさとそこを通り過ぎたそうな。
また少し行くと、強い風がヒューッと吹(ふ)いてきて、馬のくらにつけた和尚さんの編(あ)み笠(がさ)が、吹き飛ばされてしもうた。
だんだん陽(ひ)が照(て)ってきたので、和尚さんが編み笠をかぶろうとしたら笠がない。きょろきょろさがしてみたが見つからん。
「小僧、小僧。わしの編み笠を知らんか」
「編み笠なら、さっき風で道に落ちよりましたがな」
「道に落ちたら、なぜ早く言わん」
「見ること聞くことしゃべらんもんや言うから、おら黙っとった」
と、小僧さんが言うと、和尚さんは、
「落ちたもんは、何でも拾(ひろ)うもんや」
と、またまた小僧さんをしかりつけた。
また少しいくと、今度は和尚さんの乗っていた馬が、クソをボタボタと道に落とした。
小僧さんは、手に持っていた和尚さんの袈裟をひろげて、馬のクソを拾い受けた。
「和尚さん、和尚さん、ほれ落ちました」
と見せたら、和尚さんが腹を立てた。
「何でこんなもんを拾うんや。しかも、それは、わしの袈裟ではないか」
と、どなりつけた。そしたら小僧さんが、
「落ちたもんは何でも拾うもんや、言うから、おら、拾うただけや」
と言うた。
和尚さん、身から出た錆(さび)で、何も言えんかったと。
それきりぶっつりなんば味噌、あえて食ったら辛(から)かった。
小僧さんがとっても素直で癒されました。こんな心でいたいなぁと思います。( 20代 / 女性 )
むがし、むがし。秋田ど山形の間ば状箱担いで走る飛脚いだった。ほの飛脚だば、秋田の殿様の書状ば持って走って山形さ行き、山形の殿様の返事ばもらって、走って秋田さ戻る。朝が秋田で昼が山形、夕方にはまた秋田ていうよだな。一日で往復してしまうけど。
むかし、ある寺に年をとった猫がいたと。ある日、その猫が和尚さんの前にきちんと前足を揃えて「おら、昔からたくさんの鼠を殺した罪ほろぼしに、お坊さんになりたいがで、頭を剃ってくだはれ」と、頼んだと。
「鮎はカミソリ」のみんなの声
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