― 大阪府 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、あるところに鯛(たい)とふぐとがおったと。
鯛とふぐは漁師の網にかかって死んだと。
死んだんで極楽へ入れてもらわんならん言うて、三途(さんず)の川渡って、なおも行くが行くが行くと大きな門があった。
そこに赤鬼と黒鬼と閻魔(えんま)さんがおった。ここは閻魔さんが地獄と極楽の振り分けをするところだと。
鯛が閻魔さんに、
「わたしを、どうぞ極楽へやって下さい」
と言うと、閻魔さん、
「うん、お前は婚礼(こんれい)や、めでたいときに使われて人間を喜ばしてきたから極楽にやってやる」
と言うて、極楽の門を開けて入れてくれたと。
ふぐも閻魔さんに、
「私も鯛どんと一緒に網にかかって死んでしもた。鯛どんと仲ようここまで来たんだから、極楽で一緒に住みたい」
と言うた。そしたら閻魔さん、
「いや、お前は人が食べたら毒をもって命をとるやつだから、極楽へは行けん。地獄じゃ」
と言うた。そしたらふぐが、
「行けまへんか。ほんなら、もう地獄は承知しましたけんど、せめて鯛どんに別れを言わせておくれな。あの極楽の門をちょこっと開けて、中ぁ見せてやって下さい。鯛どんも心配して、まだ門から離れてないはず」
と言うた。閻魔さん、
「ほんのちょこっとの間だけじゃぞ」
言うて、赤鬼に命じて極楽の門、少しだけ開けさせたと。
そしたらなんと、ふぐがするっと中に入ってしもた。赤鬼があわてて、
「こら、お前は地獄行きなのに極楽へ入ったらいかん。出てこい。やい、戻れ」
と、おらんだと。
そしたらふぐは、
「ふぐは内、鬼は外」
と言うて、豆をまいた。
それから、節分にはこう言うて豆をまくようになったと。
むかしのたねくさり。
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むかし、越中(えっちゅう)の国、今の富山県にある村に横笛のたいそう上手な若者がおったと。 若者は炭焼きだった。山の中に小屋と窯(かま)を作り、そこに寝泊(ねと)まりしながら炭を焼くのだと。若者はなぐさみに夜毎(よごと)笛を吹(ふ)いていた。
昔、あるお寺に一人の和尚がいた。あまり裕福でもないので小坊主も置けないから、一匹の蛇をあずかって置いた。いつも外出するときには、蛇に今出て行くと告げるし、帰って来れば、また帰ったと言う
「たいとふぐ」のみんなの声
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