助けてくれた蟹を供養する情ある昔のひとの心根に教えれました 生きとしいけるものに施すことはたいせつですね( 80代以上 / 女性 )
― 福岡県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
昔、筑後(ちくご)の国は三池(みいけ)の里に、今山(いまやま)というところがあって、殿さんの大きなお屋敷があったんやと。
その殿さんには大層(たいそう)かわいらしい姫さんがおらっしゃった。
あるとき、姫さんがお屋敷内(おやしきうち)の大きな池のほとりで遊んでござらっしゃると、なにやら、ムザリ、ムザリ動くもんがある。
「あれぇ、ちいっちゃいカニじゃ。手足もこんなにやせてぇ、たよりなげやなぁ」
と言って、お供の者に頼んで、そのカニにごちそうをやんなさったと。
カニは、それから毎日、姫さんが池のほとりに来るのを待っとって、ごちそうをもろうておったもんだから、一日、一日大きゅうなっていったんやと。
あるとき、お屋敷中のみんなで今山の花見に出掛けなはったと。
殿さんも家来(けらい)たちも、花や酒に酔って浮かれて、そりゃあもう、にぎやかなこつさわぎまくっておんなさったと。
そんなすきに、姫さんな、ひとり、ふらふらと離れて小川の淵までやって来なはったんじゃと。
淵に寝ころび、足を流れにつけて、チャップリ、チャップリ遊んでおらっしゃった。
そんとき、一匹の大蛇(だいじゃ)が、草にまぎれて姫さんに近づいてきよった。
姫さんな、むじゃきにしよって気ぃ付かないんやと。
すぐきわまで近づいた大蛇が、カマ首を持たげて、そろそろ姫さんの首へ咬(か)みつこうかというときじゃった。
えらい大きなカニを先頭に、たぁくさんのカニたちが、どこからともなくあらわれて、大蛇めがけて飛びついて行った。
さぁ、姫さんな、びっくりしなはったわ。見れば、おっそろしか大蛇じゃもん。それに何万匹というカニたちが、まるで阿修羅(あしゅら)のごと、戦っとるんじゃもん。
けんど、ほどなくして、大蛇が三つに切りとられて、はげしゅうのたうちまった。
三つの身ィそれぞれが、真っ赤な血ば吹き出しながら土の中にのめりこみ、みるみるうちに血の池を三つこさえたと。
大っきなカニは、姫さんがごちそうをやっとったカニじゃったと。
こんなことがあってからというもの、今山の衆は、どげなことがあっても、清水(しみず)のカニだけには手もふれず、食べもしないで大事にするようになったんやと。
それぎんのとん。
助けてくれた蟹を供養する情ある昔のひとの心根に教えれました 生きとしいけるものに施すことはたいせつですね( 80代以上 / 女性 )
むかし、むかし、あるところに爺さんと婆さんとが暮らしてあった。爺さんは毎日山の畑のウネ打ちに行っておったと。ある日のこと、爺さんが畑のウネを打っていたら、畑の縁(へり)にあった石に猿(さる)が腰掛(こしか)けて、爺さんの悪口言うたと。
むかしむかしのおおむかし。あるところにひとりの継母がおって、いつも継子の娘をいじめてばかりいたそうな。ある日のこと、柿を十個、戸棚の中にしまっておいて用達に出かけたと。
むかしあったと。 あるところに人里離れた寺があったと。 来る和尚さまも、来る和尚さまも、みんな何かの化物にとって食われて、次の日には居なくなってしまう。 村では、和尚さまが居なくては法事も出来ん。困っておったと。
「蟹の恩返し」のみんなの声
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