猫の可愛さをもっと知りたかった。( 40代 / 女性 )
― 福岡県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
とんと昔のことや。
あるところに三人の姉妹(しまい)がおったんやと。
おおきゅうなって、三人とも嫁(とつ)いで行ったが盆暮になると、きまって、里の母ごに呼び出されて贈り物ばさせられておったんやと。
上の二人は、さいわい分限者に嫁いだもんやき、なんの苦労もなかばって、末(すえ)の娘は貧(まず)しい男に嫁いだもんやき、いつも、贈り物には困っておったんやと。
そんで、末娘夫婦は、里の母ごに、ことあるたんびに呼び出されちゃあ、こきつかわれておったんやと。
それでも、末娘の夫は、気のええ男やったから、そん年の暮には、柴を持って、嫁の母ごのところへ、あいさつばしに出かけたんやと。
ばって、そん男は、浜づたいの道々に考えたんやと。
「どうせ、嫁の里へ行ったっちゃ、こきつかわれるばっかしや。ほんならいっそのことこん柴を竜神さまに流したほうが、ましや」
そん男は、柴を竜宮へむけて流したんやと。
浜べに座って、柴の流れていった沖の方ば見とったら、竜宮から乙姫(おとひめ)さんがそん男を連れに来たんやと。
竜宮では、龍神さまが待っとらっしゃって、そん男ば見ると、そばの猫ば指してくさ、
「この猫は、わたしの三つの宝のうちの一つだけれど、柴をもらったお返しに、この猫をお前にあげよう。この猫は、毎日、小豆(あずき)を一合食べるから、必ず食べさせておくれ。一合食べれば、必ず、三合の宝物を産む猫だから」
ちゅうて、そん猫を男に与(あた)えたんやと。
男は、乙姫さんに送ってもらい、猫を抱いて我家に帰ってくると、毎日、嫁といっしょに、一合の小豆ば煮て、そん猫に食べさせたんやと。
そんで末娘夫婦は、またたく間に大金持ちになったんやと。
そん話ば聞いた、里の欲ん深けえ母ごが、末娘んとこさやって来て、うむも言わさず、そん猫ば抱いて帰って行ったんやと。
そして、欲の深けえことに、毎日三合ずつ小豆ば食べさせたもんやき、猫は、すぐに死んでしもうたんやと。
心痛(いた)んだ末娘夫婦は、そん死んだ猫の身体ば抱いて帰り、裏の庭に墓ばこさえて、埋めたんやと。
そしたら、そん墓のそばから、竹が二本、三本とはえ、それが、すっく、すっくとのびていってくさ、
ひと風吹けば、ザラザラザラッ、
ふた風吹けば、ザラザラザラッ、
とな、風の吹くたびに、ぎょうさんな黄金(こがね)ば降らしてくれたんやと。
ザラザラザラ、ザンザラン、とな。
それぎんのとん。
猫の可愛さをもっと知りたかった。( 40代 / 女性 )
「竜宮猫」のみんなの声
〜あなたの感想をお寄せください〜