民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 猫が登場する昔話
  3. 竜宮猫

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

りゅうぐうねこ
『竜宮猫』

― 福岡県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 とんと昔のことや。
 あるところに三人の姉妹(しまい)がおったんやと。
 おおきゅうなって、三人とも嫁(とつ)いで行ったが盆暮になると、きまって、里の母ごに呼び出されて贈り物ばさせられておったんやと。
 上の二人は、さいわい分限者に嫁いだもんやき、なんの苦労もなかばって、末(すえ)の娘は貧(まず)しい男に嫁いだもんやき、いつも、贈り物には困っておったんやと。
 そんで、末娘夫婦は、里の母ごに、ことあるたんびに呼び出されちゃあ、こきつかわれておったんやと。 

 
 それでも、末娘の夫は、気のええ男やったから、そん年の暮には、柴を持って、嫁の母ごのところへ、あいさつばしに出かけたんやと。
 ばって、そん男は、浜づたいの道々に考えたんやと。
 「どうせ、嫁の里へ行ったっちゃ、こきつかわれるばっかしや。ほんならいっそのことこん柴を竜神さまに流したほうが、ましや」
 そん男は、柴を竜宮へむけて流したんやと。
 浜べに座って、柴の流れていった沖の方ば見とったら、竜宮から乙姫(おとひめ)さんがそん男を連れに来たんやと。
 竜宮では、龍神さまが待っとらっしゃって、そん男ば見ると、そばの猫ば指してくさ、
 「この猫は、わたしの三つの宝のうちの一つだけれど、柴をもらったお返しに、この猫をお前にあげよう。この猫は、毎日、小豆(あずき)を一合食べるから、必ず食べさせておくれ。一合食べれば、必ず、三合の宝物を産む猫だから」
 ちゅうて、そん猫を男に与(あた)えたんやと。
 男は、乙姫さんに送ってもらい、猫を抱いて我家に帰ってくると、毎日、嫁といっしょに、一合の小豆ば煮て、そん猫に食べさせたんやと。 

 
 そんで末娘夫婦は、またたく間に大金持ちになったんやと。
 そん話ば聞いた、里の欲ん深けえ母ごが、末娘んとこさやって来て、うむも言わさず、そん猫ば抱いて帰って行ったんやと。
 そして、欲の深けえことに、毎日三合ずつ小豆ば食べさせたもんやき、猫は、すぐに死んでしもうたんやと。
 心痛(いた)んだ末娘夫婦は、そん死んだ猫の身体ば抱いて帰り、裏の庭に墓ばこさえて、埋めたんやと。
 そしたら、そん墓のそばから、竹が二本、三本とはえ、それが、すっく、すっくとのびていってくさ、
 ひと風吹けば、ザラザラザラッ、
 ふた風吹けば、ザラザラザラッ、
 とな、風の吹くたびに、ぎょうさんな黄金(こがね)ば降らしてくれたんやと。
 ザラザラザラ、ザンザラン、とな。

 それぎんのとん。

「竜宮猫」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

悲しい

猫の可愛さをもっと知りたかった。( 40代 / 女性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

雨蛙の親不孝(あまがえるのおやふこう)

むかし。あるところに雨蛙(あまがえる)の親子がおった。親蛙(おやがえる)は子蛙(こがえる)を大事に育てたが、子蛙はちっとも親蛙の言うことを聞かん。親…

この昔話を聴く

雪のサンタマリヤ(ゆきのさんたまりや)

むかし、むかし、ルソンちゅう国の貧乏な大工の子で、丸屋(まるや)ちゅう娘のおったゲナたい。そん丸屋は、こまか時からほんとに利口か娘でナン。「どうした…

この昔話を聴く

正月神様(しょうがつかみさま)

むかし、あるところに爺さと婆さがおって正月神様がおかえりになる日に雨がドシャドシャ降ったと。爺さと婆さがお茶をのみながら、「この雨はやみそうにもない…

この昔話を聴く

現在886話掲載中!