― 青森県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
昔、たいそう美しい雪女(ゆきおんな)がいであったど。
雪女ァ、旅(たび)の人ばだまして、殺(ころ)していだだど。
ある冬の日だと。
旅人が沼(ぬあ)のあたりまで来たけァ、短い冬の日が暮(く)れてまったと。
「どこがに宿コ無(ね)べか」
と探したばて、そごら辺(あだり)にァ家コは無(ね)ぐて、沼がら、うんと離(はな)れだどこに、ぽつんと一つ、灯(あかり)コ見えだど。
挿絵:福本隆男
そこさ泊(と)めでもらうべと思って、
「お晩(ばん)です、お晩です」
と声かけだど。したけァ、中なら若い娘が出て来たど。
「なにが、ご用ですべか」
若い娘は旅の人に言ったと。
「他でもねぇ、おらァ江戸さ上(のぼ)る者だ。ここまで来たけァ、日が暮れでしまった。知らぬ道の夜の道中だば難儀(なんぎ)だはで、今晩(こんばん)一晩(ひとばん)泊めでけるわけに、いがねごすべか。なんとかこの通り頼(たの)みますじゃ」
旅人ァ、手合わせで頼んだど。娘ァ、
「この通りのあばら家(や)だ。それでも良(え)がったらどうぞ」
といったど。
旅人ァ、足洗って家さ入っていっぷくしたど。
そこさ晩飯(ばんめし)ば運んで来たど。膳(ぜん)には鯉(こい)や鮒(ふな)の味噌焼きが付いていたと。お酒まで呑(の)ませで呉(け)っだど。
旅人ァ、すっかり酔ってまて、そのままそごさ横になって高鼾(たかいびき)かいで眠(ねむ)っでまたど。
雪女、いい獲物(えもの)があがったもんだと喜(よろこ)んで、夜中になったどき、
「こら、旅の者、目ぇさませ」
と、大っきい声で叫(さか)んだど。
旅人ァ、びっくらして目さましたど。
見たけァ、口は耳元まで割(わ)れているど、目玉ぁ、ギラギラ恐(おそ)ろく光ってると。
「助けてけろー」
旅人ァ、叫(さけ)んだど。
したども、沼の辺りの一軒家だはで、誰も助ける人ァ来てくれねど。
雪女ァ、大(でった)ら包丁ば振り上げで、旅人さ馬乗りになって、包丁でブツラどひと突きに刺して、旅人ば殺してしまたど。
そして、殺した旅人の肉ば、むちゃむちゃど、喰ったど。
雪女ァ、男の人が来れば、いい女子(おなご)になり、女の人が来れば、男振りのいい男になって、次から次ど人ば殺して喰うだと。
それがら何年も経って、沼の辺りに家ば建(た)てために砂ば掘(ほ)っていだっきゃあ、骨(ほね)なんぼも出て来たど。
それ、みんな雪女に食われだ人の骨だど。
村の人たちァ、延命地蔵様(えんめいじぞうさま)建てで、雪女に喰われだ人の魂(たまし)コば慰(なぐさ)めだど。
とっちぱれ。
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むかし、あるところに大層縁起かつぎの長者がおったと。 ある年の正月、村の和尚さんが正月膳に招ばれて長者の家に行ったと。 たくさんのご馳走だ。和尚さんはおれも食べこれも食べして大いに満腹したと。
あるところに、三太いう気のいい男がおった。三太のかかは出べそだったんだが、三太のほかには、だぁれもしらん秘密だったと。ある夜のこと、三太のかかが風呂さ入っているとこを、キツネがこっそりのぞいて見てしまったんだと。
「延命地蔵様と雪女」のみんなの声
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