嫁の歌はすごくよかった( 10歳未満 / 女性 )
― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、むかし。あるところにお姑(しゅうとめ)さんと嫁(よめ)とお手伝いがいたと。
挿絵:福本隆男
ある年のお正月に、お姑さんが、
「今日は正月休みだ。正月にはお天子様(てんしさま)のところでは歌会(うたかい)をもよおすそうだが、ひとつ家(うち)でもやってみようかね」
というた。嫁が、
「歌会にはお題(だい)というのを決めて、必ずそれを入れて詠(よ)むそうですが、何にします」
と聞いた。お姑さんが、
「そうだねぇ、そんなら、歌の尻(しり)に必ず、二つ三つ四つと付けて詠むというのはどうかね」
というたら、嫁が、
「変なお題」
というた。お姑さん、嫁にけなされてカチンときたと。
「先(ま)ずは嫁、お前(め)からだ」
というたら、嫁は、この家に嫁(とつ)いでくる前にお姑さんからもらった手紙のことを歌にした。
是非(ぜひ)嫁にと貰(もら)った文(ふみ)はうれしいが
読めない文字が 二つ三つ四つ
お姑さん、ますますカチンときた。が、正月だから怒るわけにもいかん。そこで
「次は俺(お)れが詠む」というて、
やがてみな臑(すね)も太れば気も太る
可愛(かわい)いさかりは 二つ三つ四つ
と、嫁の顔を見ながら詠んだ。
嫁はにっこりして受け流したと。
次はお手伝いの番になった。お手伝いは、
たまさかに会(お)うたうれしさ夏の夜の
汗をかきかき 二つ三つ四つ
と、すまして詠んだ。
挿絵:福本隆男
お姑さんも嫁さんも、昔をなつかしむような顔になって、一ぺんに場がなごんだと。
とーびんと。
嫁の歌はすごくよかった( 10歳未満 / 女性 )
このような民話があるんですね。驚きました。 庶民の家庭で、家族が集まって歌会をするなどとは、かなり文化のレベルが高いですね。
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