方言がきつすぎて話が頭に入ってこない。 もっと考えて話を作れ。
― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 佐藤 公太郎
整理 六渡 邦昭
昔あったけド。
あるどこの兄マ、妙法寺(みょうほうじ)さんのどご通(と)て行たバ、七曲(ななめぐり)さんのどごがら、狐(きつね)、チョコチョコと出で来で、松葉(まつば)拾(ひろ)うて頭さチョンと乗(の)せで、あっちキョロ、こっちキョロ見っでモノ。
何しんでろ(するんだろ)、と思て見っだバ、狐、綺麗(きれい)だ姉さんになたけド。こっちさ来たサゲ、
「何だ、尾(お)っポ見(め)んゾ」
って言うド、
「ア、アー」
って、寄(よ)って来たけド。
「駄目(だめ)だ、駄目だ、そんな化(ば)け方だバ。尾っポ見んゼ、ホラ」
ったば、
「実は俺(おれ)狐だんども、伊勢詣(いせまい)りしたぐで姉さんサ化げだどごだ。道中の犬、恐(おっがな)ぐで困っサゲ、一緒(いっしょ)に連れで行て、呉(く)んねが」
で、言うでモノ。
道中の費用(ひよう)は、狐が皆(みな)出すで言うし、兄マ、考えでノ、ただで伊勢詣りしんなだバ、悪(わり)ぐ無(ね)サゲ、
「俺どご、だまさねっこだゾ」
って約束して、狐の化げだ姉さんど一緒に伊勢詣り行ったど。
日光(にっこう)見物(けんぶつ)して、宇都宮(うつのみや)さ泊(とま)た晩(ばん)げノ、宿の女中(じょちゅう)、
「風呂サ入ってくれ」
って、言て来たでモノ。狐の化げだ姉さん、
「セバ、風呂ごっつぉなっがノ」
って、女中がら案内さっで風呂場サ行たド。
「俺の風呂サ入るどご、見ねで呉(け)れ」
って言うけド、宿の女中、そっと隙見(すきみ)して見っだば、姉さん、湯つぼサ手ェちょっと入れでは、湯つぼの縁(ふち)、テンテンと叩(たた)ぐでモノ。
まだ、湯ゆぼサ手ェちょっと入れでは、湯つぼの縁、テンテンって叩ぐでモノ。
あんまり可笑(おか)しぐで、女中、クスッと笑ったバ、姉さん、パッと見なぐなたけド。
女中、おどろいで家中(いえうぢ)探(さが)したンども、姉さん見つから無(ね)けド。番頭(ばんとう)だの、宿の人方(ひとがた)みんなして、そこら中(うぢ)探したんども、やっぱり見つからねけド。
宿の主人(しゅじん)、困てしまて、
「家の女中、無調法(ぶちょうほう)して、お連れの娘さんを見なぐして申し訳無ごどしました」
って、あやまたド。兄マ、大ごけして、
「あれは、俺の主人の大切なお嬢(じょう)さんだ。伊勢詣りのお伴(とも)して来たナ、ここで見なぐしたんでは家サ帰(けえ)らんね。どうして呉るや」
って言ったド。
宿の主人、何度も詫(わ)びして、三宝(さんぽう)サ、金の小判(こばん)、ノロッと載せで持って来で、
「これで、御免(ごめん)して下され」
って言うけド。
兄マ、考えだ。
<あの姉さん、元は狐だ。こったげどっさり金貰うなだバ、その方が得であんめが>
「本当は勘弁(かんべん)ならねどごだんども、これも災難(さいなん)だど思て、諦(あきら)めるごどにしっデ」
って言っで、その金貰て、江戸(えど)見物に行ったド。
あっちこっち見物してノ、芝居小屋(しばいごや)さ入ったでモノ。芝居見でいたば、脇(わき)で何だが、コソコソ話しでる。
聞き耳立てて聞ぐでード、
「この間、何でも、宇都宮の宿屋で、どこの兄マだが狐の化げだ娘連れで来て泊てノ、風呂サ入ったとぎ、その娘、妙な手づぎしたどて、宿の女中、笑たバ、娘居なぐなったのさ文句(もんく)つけで、金、どっさり取たそうだ」
「ンだでけ、ンだでけ。それが御奉行(おぶぎょう)さまのお耳サ入って、太い奴(やつ)だ言うので、今、その兄マどご探してる風ンだ」
って話してっだモノ。
兄マ、おどろいて、こうして居られねェド、そーっと木戸口(きどぐち)の方サ寄って行たド。
早ぐ逃げでしまおド木戸口から出っどしたバ、
「御用(ごよう)だっ」
って、両方がら役人飛びかがって来たでモノ。
「人違(ち)げダ、人違げダ」
って、大声出したバ、
「コラシ、コラシ、何処(どこ)の人だや、そげなどこから顔出して、何しったなダ」
って声かげらっだ。
ハッと気ついだバ、田圃(たんぼ)の中の萱(かや)つぼけがら顔出して、手、パタパタさせっだけド。
やっぱし、狐がら化がさったなげだけド。
トッピン、カラリン、ねけド。
方言がきつすぎて話が頭に入ってこない。 もっと考えて話を作れ。
長崎では、七月の最後の日曜日、決まって港や深堀(ふかぼり)、三重(みえ)などの村々から、ペーロンのドラの音がひびいてきます。一隻(いっせき)の和船に、三、四十名の若者が、手に手にカイを持って乗り込み、勇(いさ)ましいドラの音にあわせて漕(こ)ぐのです。
「狐娘と伊勢詣」のみんなの声
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