民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 良い行いで宝を授かる昔話
  3. 大歳の火

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

おおどしのひ
『大歳の火』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、ある家に嫁さんがあった。
 年取りの晩に、姑(しゅうとめ)さんから、
 「あすの朝まで囲炉裏(いろり)の火を消さないように」
といわれて、寝ないで火の番をしていたと。
 ポカポカぬくいし、ついとろとろっと居眠りしたら、火が消えてしまった。
 「こりゃおおごとだぁ。なんとか、どこかから火をもらわなくてはなんね」
というて、外へ出た。
 誰か提灯(ちょうちん)つけて来ないかと思うて上下みていたら、ノッソリ、ノッソリと赤牛(あかべこ)がやって来た。目の前を歩いていくので、
 「これこれ、お前(め)、どこの赤牛だ」
 って、からだをポンポンとたたいたら、何やらドサーッと置いて行った。


 真夜中じゅう外に立っていたけど、とうとう提灯つけた人は通らなかったと。
 朝になって、姑さまに詫(わ)びたと。
 「火コもうらべと思って表に立って待っていたけど誰も通らねがった。赤牛だけが通ったので、お前どこの赤牛だって、背中をポンポンたたいたら、何だかここさ置いていった。表さまだあるから、かかさん見て呉(け)らっしゃい」
 っていうたら、姑さん表へ行って見たれば、俵(たわら)がひとつあった。開けてみたら、金(かね)がどっさり入っていたと。
 こういうことがあるから、年取りの晩は、歳徳神(としとくがみ)さまさ有り金全部供えて赤牛を待つ、ということで、早く寝ねぇで夜ふかししたもんだ。

 どっぴんからりん すっからりん。

「大歳の火」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

うちにも赤べこが来ないかなぁっと思いました。( 10歳未満 / 女性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

およねと沢内甚句(およねとわさうちじんく)

ここは岩手県※和賀郡(わがぐん)沢内村(さわうちむら)ですがの、沢内の新町(しんまち)に、明治維新(めいじいしん)まで年貢米(ねんぐまい)納めるお倉…

この昔話を聴く

地蔵むがし(じぞうむがし)

むがし、むがし。爺(じい)と婆(ばあ)どいであったど。貧乏(びんぼう)でな、正月来たども餅(もぢ)ひとづ喰(くわ)ねほどだけど。

この昔話を聴く

卓兵衛話(たくべえばなし)

 むがす、卓兵衛(たくべえ)さんという頓智(とんち)のある人がいたど。  お伊勢参(いせまい)りから無事(ぶじ)に帰って来たんで、日頃ねんごろにしている和尚(おしょう)さんのどこさ、お土産(みやげ)を持ってったど。

この昔話を聴く

現在882話掲載中!