良かったやん(?)( 10代 / 女性 )
― 富山県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
むかし、むかし、富山の置き薬屋(おきぐすりや)が、どうしたはずみか、死んでから地獄(じごく)へ落ちたと。
地獄の門をくぐると、大勢の仲間たちがいて、
「よお、おまえもか」「お前もか」
というてなつかしんだと。
挿絵:福本隆男
そこへ鬼が来て、大きい鉄棒でみんなを押しやって、釜(かま)の中へざらざらとさらいこんでしまった。
くわらくわら湯がわいてきたら、みんなは熱い熱いと苦しみだした。すると置き薬屋が釜の湯の中へ何かの薬を入れてぬるくしてしまったと。
火たき係の鬼は、そんなこととはちいとも知らないから、汗を流してたきつづけた。
釜の湯の中ではみんなが平気な顔をして、
「ええ湯じゃ、ええ湯じゃ、地獄の湯はええのう」
というて、笑っている。
釜たき鬼は、これでは手におえんと、閻魔(えんま)さまに知らせたと。閻魔さま、カンカンになって怒った。
「ようし、そんなやつどもは針の山へ追いやってしまえ」
というて、みんなを針の山へ追い上げたと。
山じゅう針だらけなので、踏(ふ)みつけたらさぞや痛かろう、いうて、みんながおじけづいていたら、その中に軽業師(かるわざし)がいた。
軽業師は、長い棒を見つけてきて、みんなをつかまらせて肩へかついだと。左右にかついだり、前後(まえうしろ)にかついだりして、
「こりゃ、こりゃ」
というて、針の山を上ったり下ったりして遊んだと。棒につかまっていた者たちは、こんなおもしろい眺(なが)めはまたとない、というて喜んでいる。
鬼が怒って鉄棒で叩(たた)きかけたら、今度ぁ置き薬屋がバラバラバラーって粉薬(こなぐすり)をまき散らした。それが鬼たちの眼(まなぐ)に入って、
「眼(め)が痛いよぅ」「眼が見えんよう」
というて、おんおん泣いたと。
挿絵:福本隆男
閻魔さま、それを見てなげいたと。
「鬼のくせに眼が痛いくらいで泣くな、バカタレ」
「それにしてもこいつら、こりゃどうもこうもならんやつらだな。こんなやつら地獄の世界に置いたらしめしがつかん。人間どものとこへ追い返せ」
というたと。
それでみんな、ぞろぞろと娑婆(しゃば)へ帰ってきたと。
これでぱっちり柿の種。
良かったやん(?)( 10代 / 女性 )
地獄を支配していても、失敗は、誰でもするんだなーと思いました
《えんまのしっぱい》で、 「怖いえんまでも、しっぱいは、するんだな」と、驚きました(*'▽'*)
鬼も泣くもんなんですね( 10歳未満 / 女性 )
閻魔が失敗するなんて!( 10代 / 男性 )
落語の地獄八景とほぼ同じ話ですね。( 20代 / 男性 )
むかし、土佐(とさ)の窪川(くぼかわ)に万六という男がおった。地主の旦那(だんな)の家で働く作男(さくおとこ)だったが、お城(じょう)下から西では誰(だれ)ひとり知らぬ者がないほどのどくれであったと。
「閻魔の失敗」のみんなの声
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