面白い物話です( 20代 )
― 東京都 ―
再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
むかし、むかし。
ある田舎(いなか)の分限者(ぶげんしゃ)が江戸見物にでかけることにしたと。
なにしろお江戸は初めての町。聞くところによれば、江戸は大層(たいそう)ぶっそうなところで、道を歩くにも少しの油断も出来ないという。
そこで分限者は、供の男衆(おとこし)に風呂敷包(ふろしきづつ)みをしっかり持たせて出かけたそうな。
江戸までの道中は、温泉に泊まってうまい酒を呑(の)んで、うまいおごっそう食べたり、舟で川下りをしてみたり、何の心配もいらないのんびりした旅だったと。
ようやく江戸についた。
道の両脇には大きな店屋が並んで、なんでも売ってるし、道には田舎とはくらべようもないほど人が多く、動きがいそがしそうだ。
挿絵:福本隆男
「なるほど、話しに聞いたとおり、お江戸は繁昌(はんじょう)な町じゃ。これ久作、あれこれ気をとられて手に持っている風呂敷包み、おろそかにすまいぞ」
「ヘイ、旦那様」
「よしよし、ほほう、どっちを向いても別ぴんな女ごばかりじゃのう。久作、包は大丈夫(だいじょうぶ)か」
「ヘイ、これ、このとおり」
「よしよし、お江戸は危ないところというからの、油断(ゆだん)は禁物(きんもつ)じゃ。包を盗(と)られぬよう気をつけるにこしたことはない。のう久作」
「ヘイ、旦那様」
「ほほう、あのおカゴに乗っていかれるのは、どこのお武家(ぶけ)さんかのう。立派(りっぱ)なおカゴじゃのう。ところで久作、包は持っとるな、どうも気にかかってならんわい」
「もっております」
「よしよし、こんなに人間の多いところでは、気をつけにゃならんわい。それにしても気にかかるのう。これ久作、包はまだあるじゃろうのう」
「そ、それが旦那様、申し訳ござりません、今の今、盗られました」
挿絵:福本隆男
「なに、盗られたとな。そうかそうか、いや、どうやらこれで、ようやく気がおちついたわい」
おしまい。
面白い物話です( 20代 )
思わず笑っちゃいます!盗られたんかーい!ってツッコミたくなる。( 40代 / 女性 )
昔々、小さなお城があったと。そのお城に、それはそれは美しいお姫様があったと。夜更になると、毎晩、立派な若侍が遊びに来たと。お姫様のおつきの者は、どうも怪しいと、はかまの裾に針を刺しておいたと。すると若侍は、その針が刺さって血をたらしながら帰って行った。
「江戸見物」のみんなの声
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