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とんちんかんこぞう
『トンチンカン小僧』

― 栃木県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、あるところに、やることなすこと、どこかずれてしまう小僧(こぞう)がおったと。
 
 ある日のこと、主人が、
 「今日は山に行って木を伐(き)って来い」
といいつけて、焼き飯(めし)を持たせてやったと。

 ところが、夕方になって帰った小僧は、一本の木も伐って来なかったと。主人が、
 「一日何をしとったか」
と問いただしたら、小僧は、
 「山に行ったら鳥が喧嘩(けんか)をしていたので、それを見ていたら日が暮れただ」
という。主人は、
 「そんな時には、鳥の首をひねってとってくるものだ」
というたと。


 次の日、あらためて木を伐りにやったところが、暮れ方(がた)になって、また、手ぶらで帰ってきた。主人が、
 「今日も木を伐って来(こ)なんだか」
と聞いたら、小僧は、
 「野っ原の道を通ったら、牛が二匹でけんかをしていたので行く事ならんもん。旦那(だんな)さんに言われたから首をひねってとってこようとしたけど、とれないうちに日が暮れただ」
というた。
 
 主人は、
 「馬鹿者(ばかもの)、怪我(けが)をしたらどうする。そんな時はあぶないから、高い木に登って、高見(たかみ)の見物(けんぶつ)、とでも言うて見ているもんだ」
と教えたと。


 その次の日も、小僧は手ぶらで帰って来た。
 「今日は何があった」
 「へえ、今日は、山火事があったので、教わった通りに高い木に登って、『高見の見物、高見の見物』と言っていたら、村の人に袋叩(ふくろだた)きにされましただ」
 「それで帰って来たのか。やれやれ。そんな時には藁(わら)をぬらしてかけるもんだ。お前はどこか抜(ぬ)けとるから、これからは赤いもんが見えたら、とりあえずは藁をぬらせ。よいな」
 「へえ」

 その翌日のこと。道の向こうから馬に乗った花嫁(はなよめ)さんが、赤いべべ着てやってきた。
 小僧は、藁をぬらして花嫁さんにかけたと。
 そしたら、花嫁さんは泣き出すは、馬は驚(おどろ)いて駆(か)け出すは、大騒(さわ)ぎだと。
 主人が平あやまりにあやまったと。
 「この大馬鹿者、こんな儀式(ぎしき)の時には、目出度(めでた)い、目出度(めでた)い言うて、お祝(いわ)い申し上げるものだ」
とおこったと。


 さてそのまた翌日(よくじつ)のこと。
 小僧はお葬式(そうしき)に出くわした。
 これも儀式じゃもの、小僧が何と言うたと思う。
 そうなんじゃ。
 「目出度い、目出度い」
いうて、お祝い申し上げたので、散々(さんざん)なお葬式になったと。
 またしても主人が、平あやまりにあやまったと。
 
 ついに主人の堪忍袋(かんにんぶくろ)の緒(お)が切れて、
 「お前は、ボタンの掛(か)け違いばかりして、二度もわしの頭を下げさせた」
いうて、小僧の頭を火箸(ひばし)でなぐったら、何と、「トンチンカン」と音がしたと。
 おしまい、チャンチャン。

「トンチンカン小僧」のみんなの声

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