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きっちょむさんのだいじゃたいじ
『吉四六さんの大蛇退治』

― 大分県 ―
語り 平辻 朝子
再話 六渡 邦昭

 むかし、豊後の国、今の大分県臼杵市野津町(うすきしのつまち)大字野津市(のついち)というところに、吉四六さんというとても面白い男がおった。

 この吉四六さんの村の山ん中に、気味の悪い大沼(おおぬま)があったそうな。
 「あそこには、遠い昔から沼の主(ぬし)の大蛇(だいじゃ)が棲んじょるっちゅうぞ」
 「何でも、昔は幾(いく)たりとも人が呑(の)まれたっちゅうき」
 村人たちは口々(くちぐち)にうわさしあい、怖(おそ)ろしがって、だあれも近寄らないところだったと。


 ある日、そこを吉四六さんが通ったんだと。背中には、隣村(となりむら)の水車小屋で麦を挽(ひ)いて作ったハッタイ粉を、大きな布袋(ぬのぶくろ)に入れて担(かつ)いどる。重いし、日暮れは近いし、早く家にたどり着きたい一心で、沼の主のことなんぞ、すっぽぉんと忘れておった。すると、
 「ザワ、ザワ、ザザザァー」
と藪(やぶ)を分けて、何かがこっちへやって来るんだと。

 ハッとして足を止めた吉四六さん、
 「き、き、きやがったぁ。俺(おれ)がバカじゃった。すっかり沼の主のことを忘れちょった」
 青くなって、あわてて近くの木に登った。

 おそるおそる下をのぞくと、おおっ、恐(こ)わ。
 太っとい蛇が、鎌首(かまくび)をもたげて、赤い舌をシュー、シューしとる。真っ赤な眼(まなこ)をギランと光らせて、今にもとびかかってきそうだ。

 
 「ひゃあぁ」
 もっと上に登らにゃ、と木にしがみついてドタバタしたら、背負っていた布袋の縛(しば)りがほどけて、ハッタイ粉がザァーッとぶちまかった。

 間のよいことに、蛇が吉四六さんを咬(か)もうとして口を開けたところだったもんで、大っきな口一杯に詰(つ)まったと。大蛇は息も出来ん。苦しそうにのたうちまわったあげくに、死んでしもうたと。
 
 命拾いをした吉四六さん、村に帰ると、ケロッとして、大沼の主を退治した言うち、手柄話(てがらばなし)に花を咲かせたそうな。
 もしもし米ん団子、早う食わな冷ゆるど。

「吉四六さんの大蛇退治」のみんなの声

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