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きっちょむさんのかき にだい
『吉四六さんの柿 二題』

― 大分県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、吉四六(きっちょむ)さんが裏(うら)の柿の下で薪割(まきわ)りをするためにマサカリを振(ふ)り上げたら、枝の熟柿(じゅくしがき)が頭に落(お)ちてきたと。 
 てっきりまさかりの刃(は)が抜けて頭に落ちてきたと思うたもんじゃき、
 「うわぁ、大変じゃ。誰か来ちくりィ。ああ痛(いて)え、早う医者を呼(よ)んでくりい」
と、大騒(おおさわ)ぎだと。


 驚(おどろ)いて駆(か)けつけた嬶(かかあ)に、
 「なにケガなもんか、熟柿が落ちてつぶれただけじゃ。こんバカタレ」
と笑われて、
 「何じゃ、熟(じゅくし)なら痛うないわ」
とケロリとして、また薪割りを始めたと。

 そしたら今度は、本当にマサカリの刃が抜け落ちて頭から血が流れたと。
 吉四六さん、憎々(にくにく)しげに柿の木を睨(にら)み上げて、
 「なにをしよるか、熟(じゅくし)どん。こん吉四六がそう何度もだまされると思うちょんのか」
 こういうたと。

 
 またあるとき。
 お寺に一本の柿の木があったと。たくさんの実をつけたのを見上げて、和尚(おしょう)さん喜(よろこ)んでおった。
 ところが、ある朝起きてみると、柿の実がひとつも無うなっておる。誰(だれ)ぞ夜のうちに盗(と)った者がおるらしい。
 和尚さん、お説教(せっきょう)の晩(ばん)にみんなに言うて聞かせた。
 「寺の柿を盗って行った者がおるが、今に仏様(ほとけさま)の罰(ばち)が当たって腹痛(はらいた)がおこるぞ」
 しかし「私がしました」とは、誰ひとり申し出ん。和尚さん、みんなを見渡(みわた)し、
 「盗(ぬす)みをした者は地獄(じごく)に行くぞ」
と、おどかしてみても、
 「今白状(はくじょう)すれば仏様も赦(ゆる)してくれるのじゃが」
と、誘(さそ)い水出しても、一向(いっこう)に手応(てごた)えがない。


 一筋縄(ひとすじなわ)ではいかないのを識(し)った和尚さん、一計(いっけい)を案じた。
 あきれたように笑うて、
 「よくもまあ、闇夜(やみよ)にあげな高い木に登れたもんじゃのう。まったく夜中じゃったのが残念(ざんねん)じゃ。いやたいしたもんじゃあ、昼間じゃったら見物人が仰山(ぎょうさん)集まって、さぞかしやんやのかっさいをあびたろうて」
と残念がってみせた。そしたら、
 「そんなに見たけりゃ、今度ぁ、昼間にやって見せちゃる」
 吉四六さん、得意(とくい)がって、こういうたと。
 
 もしもし米ん団子 早う食わな冷ゆるど。

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