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ゆめかいちょうじゃ
『夢買い長者』

― 新潟県 ―
語り 平辻 朝子
再話 六渡 邦昭

 とんと昔があったけど。
 あるところに正直な爺(じ)さと婆(ば)さがあって、その隣りに欲深爺(よくふかじい)と婆があったと。
 ある正月元旦に、隣の爺が婆に、
 「婆、婆、おら妙な夢を見たや」
 「そうけ、どんな夢だ」
 「それがな、おらが大船(おおぶね)に乗って、お前の内股へ乗り込んだ夢だった」
 「そんげな馬鹿(ばか)げた夢、いやらしい」
 「いやらしいたあ、なんだ」
 欲深爺と婆、初夢のことから、一つ言い、二つ言いして、大喧嘩(おおげんか)を始めた。


 その声が外に響いて、正直爺さに聴(き)こえ、
 「ここん衆(し)は元旦から何してんだ。喧嘩騒ぎ(けんかさわぎ)をしてどういうがだ」
って、二人の間さ割って入ったと。

 「この馬鹿爺が埒(らち)もねぇ馬鹿夢話をしたからだ」
 「婆、何を言う。俺の初夢だ、馬鹿夢てや何だ」
 「まぁまぁ、お前方(めがた)止(よ)さんか。いったいどんな夢を見たてがだ」
 「こんなんだ」
とて、欲深爺、初夢の話をした。婆が、
 「ふん、馬鹿夢」
 「何をっ、見たもんは見たもんだ」
 「ふん、いやらしい」
とて、またののしりあいだ。
 「分かった。その夢があるから喧嘩をするのだべ。夢が無(の)うなったら争いの元も無うなるすけ、その夢、俺が買うてやる」
 「へっ、こん馬鹿爺の馬鹿夢をか」
 「んだ」
って、正直爺さ、幾(いく)らかの銭を出して、その夢を買うたと。


 婆、欲深爺に、
「馬鹿夢でも銭になりゃ、いい夢だ」
って言うたって。正直爺さ、
「もう争うなや。正月なんだから」
って言うて、家さ戻ったと。
 
 正月元日のその日は、天気がばかに荒れてひどい吹雪(ふぶき)になったと。
 そしたら、その夜更け、正直爺さの家へ、男が七人、ゾロゾロと入ってきて、
 「おらだち船曳き(ふなひき)だ、大川を舟ぇ曳っぱってここまで来たけども、この吹雪じゃどうしようもねぇ。寒くはなるし、腹は減ってくるし、どうか、今夜一晩泊めてくれんか」
というた。
 「そりゃ難儀(なんぎ)なことでした。こんなときはお互いさまらすけ、なじょうも泊まってくれ」
 正直爺さと婆は温かい雑炊をこしらえて七人の船曳きたちに食べさせ、火をごんごん焚(た)いた囲炉裏(いろり)の側(そば)で寝かせてやったと。
 正直爺さは火加減をみながら,婆さは仕事着の破れを繕(つくろ)いながら起きていたけれど、いつの間にかウトウトーとしていて、気がついたときには、七人の船曳たちの姿が消えていた。


 「はて、どうしたろ」
 正直爺さが川へ行ってみたら、舟は繋(つな)いであったが、七人の男どころか、人っこひとりとていない。どこへいったのかもわからん。
 舟に入って見たら、米俵(こめだわら)も、味噌樽(みそだる)も箱詰めの魚(とと)も、銭までずっぱり積んであり、帆柱には宝船に乗った七福神(しちふくじん)のお宝絵が貼ってあった。

 そのお宝絵をみた正直爺さは、ふと、買うた欲深爺の初夢を思い出した。
 「確か、大船が乗りつける…だったな。そうか、姿を消したあの七人の船曳きたちは、このお宝絵の七福神であったか」
 正夢(まさゆめ)は人なりに、といわれるが、主(あるじ)のいないこの宝船は、正直爺さに届いたものだったと。
 長者となった正直爺さと婆さは、一生安楽に暮らしたと。
 
 こんで、いちごさけ申した。

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