民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 偶然に宝を授かる昔話
  3. あぶの夢

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

あぶのゆめ
『あぶの夢』

― 新潟県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 とんと昔あったでん。
 ほかほかと南の風が吹くあたたかい日に、村の若い者が二人して、春山へたきものきりに行ったと。
 ひとりの男は山に消え残った雪をいじって遊んでいたが、もうひとりの男は疲(つか)れが出たのか、あおのけになってゴウゴウといびきをかいて眠ってしまったと。
 はあ、もう起きるかと思って起きている男がのぞいて見たら、あぶが一匹、寝(ね)ている男の鼻の穴から飛び立って行ったってや。
 ほうしてひとしきりどっかへ行って、またもどって来て鼻の穴の中へもざもざともぐりこんだと。
 こりゃ、面白(おもしろ)いこともあるもんだと見ていると、男は目をさました。


 
 「いや、おら、面白い夢を見たや。この峠の白いつばきの花を折ろうとしたらば、その下にかながめが埋(う)まっている夢だ。こんどお前と二人で白いつばきを捜(さが)して、そのかながめを掘(ほ)ろうや」
 そう言って聞かせたと。 

 ところが、もう一人の眠らん男がこっそりその白いつばきを捜し当ててその下を掘ったら、ほんとうにかながめが三つ見つかったてや。やれ、よかったと喜んでその男は眠った男にしゃべったと。
 眠った男は「どんげなかながめだか、ひとつおらにも見せてくれ」
と言うて見に行ったら、かめの底に『十(とお)のうち』と書いてあったと。
 かめを三つ掘った男は字を知らんかったてや。
 字の読める男が、さっそく白いつばきの下を掘ったらば、かながめが七つ出てきた。

 男は、たいそうな金持ちになって一生安楽に暮らしたと。

 これで つづきつばき まめそうろう。

「あぶの夢」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

梟の染物屋(ふくろうのそめものや)

むかし、むかしの大むかし。フクロウは染物屋だったと。店は、たいした宣伝もせんのに、えらくはんじょうしたそうな。朝はまだ日の出んうちから、色んな鳥がや…

この昔話を聴く

雪姫(ゆきひめ)

昔、あるところに東長者(ひがしちょうじゃ)と西長者(にしちょうじゃ)とがあった。東長者には使用人が三百六十五人もいた。雨風の強い日があれば使用人は田…

この昔話を聴く

幽霊の願い(ゆうれいのねがい)

むかし、越後の国、今の新潟県に源右ヱ門という侍がおったそうな。度胸はあるし、情けもあるしで、まことの豪傑といわれたお人であったと。あるときのこと、幽霊が墓場に出るという噂が源右ヱ門に聞こえた。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!