最後にも、死んだカエルさん達を供養してあげた、というのがまた良かったです。( 40代 / 男性 )
― 長崎県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
昔、あるところに庄屋(しょうや)があった。庄屋には年頃の美しいひとり娘(むすめ)があったと。
あるとき、庄屋の妻(つま)が畑へ出ていると、一匹の小(こ)んまい蛇(へび)がにょろにょろと出て来て、蛙(かえる)を呑(の)もうとした。可哀想(かわいそう)になったので、
「これ、蛇々(へびへび)、その蛙を呑まないで。助けてやれば私の娘を嫁(よめ)にやろ」
と言うた。
そしたら、今まで小んまい蛇だったのが、にわかに四斗樽(よんとだる)みたいな太(ふっと)い大蛇(だいじゃ)になって、蛙を放してどこかへ行ってしまったと。
それからしばらく経(た)ったある日、大蛇が庄屋の家へやってきた。
「この間(あいだ)約束した娘を嫁に貰(もら)いにきた」
と言う。庄屋と妻は、腰(こし)を抜(ぬ)かすほどびっくりした。
「小んまい蛇だったので冗談(じょうだん)に言うたら、取り返しのつかんことになって、あなた、どうしましょう」
「いかにも冗談にきまっとる。しかし蛇はそうは受けとらんかったようだ。さて困った」
庄屋は蛇に、
「急にやって来られても返事のしようがない。今日のところは帰ってくれんか」
と言うて、なんとかその場をとりつくろった。
蛇は、その日はおとなしく帰ったと。
が、次の日も、その次の日も、そのまた次の日もやってきて、どうしても娘を嫁に貰うと言って承知(しょうち)しない。その上、もし約束を果(は)たさないと、大水を出してこの村を流してしまう、と言うておどかした。
庄屋はいよいよ困(こま)った。いかに可愛(かわい)いひとり娘とはいえ、村の難儀(なんぎ)とは換(か)えることが出来ない。とうとうこのことを娘に話した。
すると娘は、
「蛇にとっては約束は約束なのでしょう。わかりました。私がお嫁に行くことで村がすくわれるなら、私、大蛇にでもお嫁に行きます」
と言うた。
約束の日、娘は美しく着かざって、両親や村の人たちに送られて池のほとりへ行ったと。
蛇の迎(むか)えの来るのを待っていたら、空に黒雲(くろくも)がわいて、大雨が降(ふ)ってきた。池には激(はげ)しい波が立って、その波がグルグル、グルグル渦巻(うずま)いて、やがて渦の真ん中から大蛇が現われた。大っきな赤い目で娘を見据(す)え、長い舌を出したり引っこめたりしている。おっそろしげだと。大っきな口を開けて、今にも娘を喰(く)わえそうなそぶりを見せた。
そのとき、娘の前に一匹の蛙が飛び出て来て、大蛇に向かい合った。その蛙が啼(な)いたら、四方八方(しほうはっぽう)から無数の蛙がピョンピョン、ピョンピョン跳んで来て、大蛇に飛びついて行った。
蛙は大蛇に呑まれても、押しつぶされてもあとからあとから噛(か)みついていって、とうとう大蛇を噛み殺(ころ)してしまった。
娘の命は助かったと。
庄屋と村人は、このとき死んだ沢山(たくさん)の蛙たちを哀(あわ)れに思い、蛙石を池のほとりに置いて供養(くよう)したと。
こるばっかるばんねんどん。
最後にも、死んだカエルさん達を供養してあげた、というのがまた良かったです。( 40代 / 男性 )
むかし、あるとろに和尚(おしょう)さんと小僧(こぞう)さんとが居ったと。そのお寺に大きい枇杷(びわ)の木があって、毎年うんとこ実がなるのだと。ところが和尚さんは欲んぼうで、自分ばっかり食うて、小僧さんにはちいっとも食わせないのだと。
むかし、百姓(ひゃくしょう)は、ただ下積(したづ)みになって暮らして来たわけだナス。 干魃(かんばつ)で苦しみ、冷害(れいがい)で泣がされ、年貢米(ねんぐまい)の割り当てでは役人にしぼり取られでス。
「蛙報恩」のみんなの声
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