It's the Japanese Romeo and Juliet
― 長野県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
昔(むかし)、京の都(みやこ)で源氏(げんじ)と平家(へいけ)が戦(いくさ)をしていた頃(ころ)のこと、信濃(しなの)の山あいの小さな里に、傷(きず)を負(お)った一人の若武者(わかむしゃ)がたどり着いた。
たまたまそこを通りかかった里の長者(ちょうじゃ)は、若武者を気の毒に思って、家へ連れ帰ったそうな。
長者には、お清(きよ)という大層(たいそう)美しく気立て(きだて)の良い娘(むすめ)がおった。お清は毎日こまめに若武者の世話をやき、手厚い(てあつい)看護(かんご)をしてやった。その甲斐(かい)あって、若武者の傷は薄紙(うすがみ)をはぐように快(よ)くなってゆき、ふた月もするとすっかり治ったと。ふたりはいつの間にか好き合うようになっていたそうな。
が、元気をとり戻(もど)した若武者には、都に戻らなくてはならない事情(じじょう)があった。
「必ず戻って来る。そしてお前と夫婦(めおと)になるから待っていてくれ」
若武者はお清にそう言い残して、都へ旅立って行った。
それから三年が過ぎた。
お清は若武者を思って、夕暮れ(ゆうぐれ)になると、
「この夕焼けをあの人も見ているかしら」
「あの鳥は都へも行くかしら」
と、深い溜息(ためいき)をもらしておった。
長者はそんなお清を見るにつけ、早く婿(むこ)をとって幸せにしてやりたいと思い始めた。
ある日、長者は一人の男を連れて来てお清に会わせた。
お清は困ってしまった。
若武者への想いは断ち切れるものではないし、かといって父のすすめにさからうことも出来ん。考えた末お清はこう返事をした。
「淵(ふち)のがけのてっぺんに、一輪のボタンの花が咲いております。そのボタンをとってきて下さるお方となら夫婦になりましょう」
これを聞いた男は、二つ返事で承知(しょうち)した。
次の日、男は長者とお清が見守るなか、そろそろとがけを登って行った。
ところが、ちょうどその頃、あの若武者が里へ戻って来た。
若武者はことのあらましを里の人から聞くや、一目散(いちもくさん)に淵へと駆(か)けつけた。そして、お清や長者への挨拶(あいさつ)もそこそこに、男の後を追って急ながけを登り始めた。ぐんぐん登って、ついに男を追い抜いた。そして、てっぺんまで一気に登りつめ、美しく咲いているボタンの花に手を伸(の)ばした。
そのとき、急に風が吹いて花が揺(ゆ)れた。
あわててその花をつかもうとした若武者は足を滑(す)べらせて、「うおっ」と一声残してまっさかさまに落ちてしまった。
これを見たお清は、長者の手をふりほどいたかと思うと、狂(くる)ったように駆(か)け出し、あっという間に深くて暗いふちに身をおどらせた。
「いやぁー」
と張り叫(さけ)ぶ声が長く尾(お)をひいたそうな。
次の年からは、淵の断がいに、今まで見たこともないような美しいボタンの花が二輪(にりん)、寄り添(そ)って咲くようになった。
人々は、それを“お清ボタン”と呼んで、長く二人をしのんだそうな。
まんまん むかしが花咲いた。
It's the Japanese Romeo and Juliet
すごい悲しいくて泣ける、二人とも死んじゃったけどお花になってよかったね( 10歳未満 / 女性 )
むがし、むがし。秋田ど山形の間ば状箱担いで走る飛脚いだった。ほの飛脚だば、秋田の殿様の書状ば持って走って山形さ行き、山形の殿様の返事ばもらって、走って秋田さ戻る。朝が秋田で昼が山形、夕方にはまた秋田ていうよだな。一日で往復してしまうけど。
「お清ぼたん」のみんなの声
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