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とりのみじい
『鳥呑爺』

― 長野県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでおったと。
 ある日、お爺さんは山の畑で働いておったと。お昼になったので弁当に持って来たかい餅を食べ、残りを木の枝に塗りつけて、その木の下で昼寝をしたと。
 そこへ一羽の山雀(やまがら)が飛んで来て、木の枝に止まった。そしたら、かい餅がくっついたと。
 鳥が羽をバタバタさせてもがいている音で目を覚ましたお爺さん、
 「おうおう、可哀そうに、待て待て、そんなにあばれると羽にも餅がついてしまうぞ」
というて、山雀を手にとって、その足についている餅をなめてとってやろうとした。 

 
 そしたらなんと、爺さんには歯がなかったもんで、餅を吸いとっているうちに山雀も一緒に、つるんと呑みこんでしまった。
 「ほい、しもうた」
というたが、あとのまつり。腹の中で山雀がぴくぴく動いとるのだと。
 「こりゃ、どうしたもんか」
と腹をさすっておったら、そのうち、ヘソのところで何か触るものがあった。
 見ると、山雀の尾羽の先がヘソからちょこっと出ているのだと。 

 お爺さんがそれを引っぱってみたら、

 チチンプヨプヨ ゴヨノオンタカラ

 と、鳥の啼(な)くようなオナラが出た。
 「ありゃ、ありゃりゃ、でもおもしろいな」
というて、また、それを引っ張ってみた。


 チチンプヨプヨ ゴヨノオンタカラ

 というオナラが、また出たと。
 「『ゴヨノオンタカラ』とは何だかめでたいな、婆さんにも聞かせちゃろ」
というて、急いで家に帰ったと。
 お婆さんにわけを話して、二人で何度も何度も山雀の尾羽を引っ張って楽しんだと。そのうちお婆さんが、
 「お爺さんや、こんなにめでたいオナラをふたりだけで聞いているのはもったいないなや。これは、お殿さまにもおきかせなされませ」 
 と、すすめるので、次の日、殿さまの御殿へ出掛けて行ったと。
 御殿の裏の竹薮(たけやぶ)で竹を伐(き)っていると、番人がやって来て、
 「殿さまの竹を伐るのは何者だ」
と、とがめたと。お爺さんは、ここぞと思って、
 「わしは、日本一(にっぽんいち)の屁放(へひ)り爺でごじゃる」
と、胸をそらせた。

 
 「なに、日本一の屁放りとな。それなら殿さまの御前(ごぜん)でおきかせしてみよ」
というて、お爺さんを御殿の中へ連れて行ったと。
 殿さまの前へ出て、ヘソのところに手をやり、山雀の尾羽を引っ張った。

 チチンプヨプヨ ゴヨノオンタカラ

 と、そりゃいい音が出たと。
 殿さまはじめ、そこにひかえていた家来一同大喜び、
 「当家が栄えるめでたい屁じゃ」
という者もあって、お爺さんは大いに面目をほどこしたと。
 殿さまの竹を伐ったのもおとがめなしで、褒美(ほうび)をたくさんいただいて帰り、お婆さんとふたり、一生安楽に暮らしたと。

 いちご さかえた。

「鳥呑爺」のみんなの声

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