― 熊本県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
資料 「昔話研究」第1巻 第4号 熊田太郎 三元社刊
昔あったと。
カッコという名前の子供があったと。
実の母さんは早ように死んで、継母(ままはは)が来たそうな。
挿絵:福本隆男
父さんは、一人っ娘(こ)のカッコがふびんで、なにごとにつけカッコ、カッコと可愛がるもので、継母はカッコがだんだん憎(にく)くなった。
ある日のこと、父さんが他所(よそ)へ行って、二、三日して戻って来たら、いつも父さんが帰ってくるとすっ飛んできて首にぶらさがるカッコがやってこん。
「オーイ、カッコ、父さん、今戻ったぞう」
と家の奥に呼ばってみたが、やっぱりやって来ん。
「家に居(お)らんのか」
と、がっかりして、継母に
「カッコは何処(どこ)へ行ったか」
と言うたら、継母は、
「今までその辺で遊んでいた」
と言うた。
実は、継母はカッコが憎くてならんかったもんで、父さんの留守(るす)にカッコを殺して裏山(うらやま)に埋(う)めて、知らん顔をしとった。
父さん、まあだ脚絆(きゃはん)を片足解いただけだったが、カッコが本当にどこかへ遊びに行っているのだと思うて、じきに陽が暮れるから捜(さが)しに行ったと。
「カッコー、カッコー」
と呼びながら、あっち歩き、こっち走りして捜し回ったが、どこからもカッコは出て来ん。
挿絵:福本隆男
そのうち、必死になって、大声で、
「カッコー、カッコー」
と呼ばって動いているうちに、父さんな、とうとう鳥になってしまったと。
それが「カッコー」と啼(な)いている郭公鳥(かっこうどり)だと。
郭公鳥の片足には脚絆履(は)いたような羽毛が生えているが、もう片足には生えておらん。それは、昔にこんなことがあったからなんだと。
そりばっかり。
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昔、あるところに貧乏(びんぼう)な爺(じい)さんがあった。 爺さんの田圃(たんぼ)へ行く途中(とちゅう)の岐れ道(わかれみち)のところに、庚申様(こうしんさま)が祀(まつ)られてあった。
「郭公鳥の由来」のみんなの声
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