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たいさくさんとおぶぎょうさま
『泰作さんとお奉行さま』

― 高知県 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志

 とんとむかし。
 四国(しこく)の土佐(とさ)、今の高知県(こうちけん)の中村(なかむら)に、泰作(たいさく)さんというとんちもんが住んでおった。
 泰作さんは、毎日、荷物(にもつ)をしょって山の村へ商(あきな)いに行った。ところが、道は狭(せま)いし、草がぼうぼう生えていて歩きにくい。なんとかならんかと思っていた泰作さん、ふと、いいことを考えついた。
 そして、町の人に、
 「山には仏法僧(ぶっぽうそう)というめずらしい鳥がおって“ブッポウソウ、ブッポウソウ”と、ええ声で鳴(な)きよる」
と言い歩いた。

 
 さあ、町中この噂(うわさ)でもちきりだ。とうとう御奉行(おぶぎょう)さまの耳にまで入った。中村の御奉行さまは、とっても物好きで、何かめずらしい物があると聞くと、どうでも自分の物にしなければ気が済(す)まん人だった。さっそく、
 「山へ仏法僧をつかまえに行く」
と言いだした。家来(けらい)はあわてて、
 「御奉行さま、お言葉ですが、山へ行く道は狭いし、草がぼうぼう生えているので、とうてい御奉行さまには歩けません」
と言うたが、御奉行さまは耳を貸(か)さん。
 「では、すぐに道を直せ」
こう、家来に言いつけた。


 町から山の村へ行く道の工事(こうじ)が始まって、しばらくすると広い立派(りっぱ)な道が出来上がった。家来は御奉行さまの所へ報告(ほうこく)に行った。
 「御奉行さま、山へ行く道がようやく出来上がりました」
 「よし、すぐにでかけよう」
 御奉行さまは沢山(たくさん)の家来をひきつれて、新しい道を山へ登って行った。しかし、山に行っても、クゥクゥクゥと山バトが鳴くばかりで、いくら捜(さが)しても仏法僧などおらん。
 御奉行さまはかんかんに怒(おこ)って、
 「仏法僧が山におると言いふらした者をつかまえてこい」
と、家来に命令(めいれい)した。やがて、この噂の元が泰作さんだとわかって、泰作さんは奉行所へつれて行かれた。


 取り調べが始まると、御奉行さまは顔を真赤(まっか)にして、
 「これ、泰作、よくもお前は、この奉行をだましたな。山には仏法僧などおらんではないか」
と、どなりつけた。そうしたら、泰作さん、平気な顔をして、
 「わしが山に行ったときには、まっこと、仏法僧がおりましたがのう。おおかた、道ぶしんの音にたまげて、仏法僧は山の奥(おく)へ逃(に)げてしもうただよ」
 さすがの御奉行さまも何も言えんかった。
 泰作さんのおかげで、立派な道が出来上がり、山の村の人達は、おおいに喜(よろこ)んだそうな。 

 むかしまっこうたきまっこう、たきからこけて猿(さる)のつびゃぁぎんがり。

「泰作さんとお奉行さま」のみんなの声

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大岡越前とか遠山金四郎とか名奉行も居れば困った御奉行さんも居るんじゃのう。

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