娘が学校で家で読んだこぶとり爺さんと違うこぶとりじいさんの話を聞いた。なんで違うの?ときかれてここにたどり着きました。岩手のこぶとりじいさんは鬼じゃなくて天狗なんですね。修験道の歴史を留めていて、大変興味深くまた歴史的な背景がありそうで面白いなと思いました。ぜひ語り継いでいってほしいと思います。( 30代 / 女性 )
― 岩手県上閉伊郡 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
昔、むかし、あるところに額(ひたい)に拳(こぶし)ほどの瘤(こぶ)のある爺さまが二人あったと。
二人の爺さまは瘤がみっともないから取ってもらおうと思い、山奥のお宮に詣(まい)って、神様に願(がん)かけの為に夜(よる)ごもりをしていたと。
あるとき、真夜中ごろになって、遠くの方から笛や太鼓のはやしの音が聞こえてきた。
こんな夜の夜中に、何事だろうと思っていたら、その音が段々に近づいて、鳥居のところまでやってきている。
とれれ とれれ
とひゃら とひゃら
すととん すととん
と、はやしの音がもうお宮の前で聞こえてきた。
わけが分からないので、二人の爺さまは片すみに隠(かく)れようとした。
そこへお宮の戸がガラリと開いて、なんと、六尺(ろくしゃく)もある、顔の赤い鼻の高い天狗共が五、六人連れで入ってきた。
とれれ とれれ
とひゃら とひゃら
すととん すととん
と、天狗どもははやしている。が、はやしばかりで舞い手が居ない。
「お前、舞え」
「いや、お前が舞え」
と、互いに舞いをすすめるが、どうもこの中には舞いの出来るものが居ないらしい。
一人の天狗がいまいましそうに、
「ちぇ」
といって片わらを見たとたんに、隠れていた二人の爺さまが見つかったと。
「何だ、人間の爺どもがいたぞ。お前たち舞を舞ってくれ」
といって、手前の爺さまの袖を引っ張って、みんなの前へ突き出したと。
その爺さま、はじめは怖くてふるえていたが、天狗達のはやしがなかなかおもしろいので興(きょう)に乗って踊り出した。
くるみはぱっぱ ぱあくずく
おさなきゃぁつの おっかっかぁの
ちゃるるう すってんがあ
と、三度くり返して歌いながら、舞ったと。
天狗どもは大層喜んで、手を叩いて誉めたと。
挿絵:福本隆男
「せっかくの好(よ)い舞だが、どうも、お前の額の瘤が目ざわりだ。面の造りがよく見えないな。どれ、その瘤をとってやろう」
といいながら、天狗は爺さまの額の瘤を取ってしまったと。
爺さまは、急に頭が軽くなって、大喜びで引きさがった。
その次に、もう一人の爺さまが、丸座(まるざ)の真ん中に引き出された。
「こんどはお前だ。楽しく舞えよ」
といって、天狗どもは、
とれれ とれれ
とひゃら とひゃら
すととん すととん
と、はやしはじめた。
が、この爺さま、天狗があまりに怖くて、身体(からだ)がふるえて、膝(ひざ)がガクガクだったと。
それでもせきたてられて、仕方なく、
ふるきり ふるきり ふるえんざあ
こおさめ(小雨)の降るときは いかにさみしや
かろらんとも すってんがあ
と、歌いながら踊った。けれども、声がふるえ、歯もガチガチいうて合うてないし、おまけに調子も低かった。
陽気好きの天狗どもはいやな顔をして、
「もう少し、元気よくやってくれ」
というた。
爺さまは、そう言われるといよいよ縮み上がって、とうとう立っていられなくなった。尻餅(しりもち)ついて、泣き出したと。天狗どもは、
「臆病にもほどがある。せっかくの面白い舞も、泣きつぶされてしまった。お前のような爺には、二度と会いたくない。さあ、この瘤でも持って帰れ」
と言って、先(さっき)、もう一人の爺さまから取った瘤を、この爺さまの鼻の上に投げつけた。
爺さま、びっくりして鼻の上をこすってみると、額にあった前の瘤に加えてもうひとつ鼻に瘤が出来てあった。
この爺さま、二目と見られない顔になったと。
どんとはらい。
娘が学校で家で読んだこぶとり爺さんと違うこぶとりじいさんの話を聞いた。なんで違うの?ときかれてここにたどり着きました。岩手のこぶとりじいさんは鬼じゃなくて天狗なんですね。修験道の歴史を留めていて、大変興味深くまた歴史的な背景がありそうで面白いなと思いました。ぜひ語り継いでいってほしいと思います。( 30代 / 女性 )
面白い!!
いつものこぶとりとはちがう( 30代 / 男性 )
このこぶとりじいさんおもしろい( 20代 / 男性 )
天狗がコブを取ってあげるところが優しい。( 10歳未満 / 男性 )
「くるみはぱっぱ」の歌が聞けてよかったです! ありがとうございます‼️( 50代 / 女性 )
かわいそうでした… ( 30代 / 男性 )
昔々、小さなお城があったと。そのお城に、それはそれは美しいお姫様があったと。夜更になると、毎晩、立派な若侍が遊びに来たと。お姫様のおつきの者は、どうも怪しいと、はかまの裾に針を刺しておいたと。すると若侍は、その針が刺さって血をたらしながら帰って行った。
「こぶとり爺さん」のみんなの声
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