年をとりたくないとわがままを言ったら余計年をとってしまった。( 10代 / 男性 )
― 岩手県 ―
語り 井上 瑤
再話 佐々木 徳夫
再々話 六渡 邦昭
むがしあったずもな。
あるどこに年取りだぐねえ男がいだんだど。
ある年の、暮れも迫(せ)まったごろ、その男が、
「年取りだぐねえ、年取りだぐねえ」
って、村の中を口ぐせのように言って歩いでだど。村の人が笑っで、
「なんぼ年取りだぐねえたって、誰でも年は取んだじぇ。お前(め)ばかり年取らね訳(わ)げにはいがねんだじぇ」
って言うど、
「おら、年取りの晩には、大根穴さ隠れでお年神様と出合わねぇようにする。そしたら年取らねぇべが」
って言ったど。
そしてるうちに大歳(おおみそか)の日が来だど。
その晩、男は大根穴さ隠れだど。
お年神様が袋さいっぺえ年を入れで、あっちさもこっちさも配り歩いだど。
挿絵:福本隆男
ほだども、急に亡ぐなった人がいだりして、袋さいっぺえ年を余してしまっだど。年神様は、
「さあて、なじょしたら良がんべ。こったに年が余ってしもうた。持っで帰るのも重いし、どごたりさ、やだらに投げるわげにいがねえし」
どて、あっちこっち捜したれば、村はずれの畑に、大(お)っきな大根穴あっだど。
「おお、こごだこごだ、こごがええ。こごさ投げで行ぐべが」
どて、袋の口あげで、さかさまにドサッど、ぶちまげだど。
すたれば、大根穴さ隠れでだ男の頭さ、いっぺぇ、年がふりかがっでしまっだど。
さあ、おおごどだ。男の頭は、あれやあれやといっでるうぢに白髪になって、白髪になっだど目えむいでだら、毛が抜げで、禿(は)げでしまっだど。顔にシワ寄って腰こ曲がってしまっで、やっどごやっどご大根穴がら出はって来だども、まるっきり年寄りになってしまったど。
年どいうものは、なんぼ大根穴さ隠れだって、追(ぼ)っかげできて取らね訳げにゃいがねもんだどや。
どんとはれ。
年をとりたくないとわがままを言ったら余計年をとってしまった。( 10代 / 男性 )
年はたらなきゃ行けないんですね( 10歳未満 )
岩手日報のコラム欄で知りました。 笑える、年はどうしたって取るもの。 大根の穴のぞいたてみたくなる話。 ( 50代 / 女性 )
むがすあったずもな。あるどごに旅人(たびびと)がいて、歩いでいだら日が暮れだ。「野宿はしたくねぇし、今夜一晩(ひとばん)泊めて呉(け)るどご無(ね)がなぁ」っで言って、なおも歩いでいだら、うまいごどに一軒家(いっけんや)があったど。
むかし、あるところにお寺があって、その門前に貧乏(びんぼう)な夫(とど)と嬶(かか)が暮(く)らしておっだど。 あるとき夫が遠くへ旅に出掛(か)けたど。そして、とある長者どの家さ、金持ちになる弟子にして呉(く)ろと頼(たの)んだど。
むかしは染物(そめもの)をする店を普通(ふつう)は紺屋(こうや)と呼んだがの、このあたりでは紺屋(くや)と呼んどった。紺屋どんは遠い四国の徳(とく)島からくる藍玉(あいだま)で染物をするのですがの、そのやり方は、藍甕(がめ)に木綿(もめん)のかせ糸を漬(つ)けては引きあげ、キューとしぼってはバタバタとほぐしてやる。
「避けられない年取り」のみんなの声
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