幼い子供がいる身なので、この話を聞くと胸が締め付けられるようになります。( 30代 / 女性 )
― 兵庫県 ―
語り 平辻 朝子
再話 六渡 邦昭
むかし、あるところに一軒(いっけん)の飴屋(あめや)があった。
ある夏の夜更(よふ)けに、飴屋の戸を叩(たた)く者がある。
トントン トントン
「こんな遅(おそ)くにい」
寝床(ねどこ)で主人(しゅじん)は掛(か)け布団(ぶとん)を引き上げ、聞こえないふりをした。したが、また、
トントン トントン
聞こえてしまった。
「もお」
仕方(しかた)なく起(お)きて、戸を開(あ)けた。不機嫌声(ふきげんごえ)で、
「だれえ、なにい」
と、問(と)うたら、目の前に立っていたのは、白装束(しろしょうぞく)の青白ぉい顔した若(わか)い女だ。それがかぼそい声で、
「すみません、飴を一文(いちもん)、売(う)ってくだされ」
と言うたもんだから、主人のねむい目がぱちっとあいた。飴を受(う)けとった女はうれしそうに帰って行ったと。
次の晩(ばん)も、その次の晩も、青白顔をした女は一文銭(いちもんせん)を持って飴を買いに来た。
そんなことが毎晩続くので、飴屋の主人は気味(きみ)が悪(わる)くなった。
六日目(むいかめ)の夜に主人は、
「このところ毎晩一文銭で飴を買いに来るあの女は、どこのだれで、どんなわけがるんだろう。今夜はこっそり後をつけてやろう」
と思うて、女の来るのを待っていたと。
やがて、トントン トントン
と、戸が叩かれた。いつもの女だった。
「すみません。飴を一文、売ってくだされ」
女はその日に限(かぎ)って悲(かな)しそうな顔で飴を受けとり、帰って行った。
その後を主人がこっそりついて行くと、女はお寺に入っていき、新墓(にいばか)のところで、ポッと消(き)えてしもうた。
「あれっ、どこへ行った。確(たし)か、このあたりで見失(みうし)のうたが・・・・・・」
と言いながら、新墓に近づいた。すると、墓の下から赤ん坊(ぼう)の泣(な)き声と、それをあやす女の声が聞こえてきた。
「ホギャー、ホギャー」
「よし、よし。飴をやるから泣くな、泣くな。でも、持っていた六文の銭(ぜに)をもう使いきった。明日からは飴を買えん。どうしよう」
と言うている。まちがいなく、毎晩飴を買いに来る女の声だ。
主人は魂消(たまげ)て、家へとんで帰った。布団をかぶって震(ふる)えておったと。
翌朝(よくあさ)、飴屋の主人はお寺へ行き、和尚(おしょう)さんにこれまでのことを話し、新墓を掘(ほ)り返(かえ)した。
棺桶(かんおけ)のフタをのけて中をのぞいたら、死んだ若い女が、両膝(りょうひざ)の間に赤ん坊を抱(だ)くようにしていた。赤ん坊が飴をしゃぶっておったと。
和尚さんが言わるるには、
この若い女は、もうじき産(う)まれる赤ん坊を楽(たの)しみにしておったが、、急の病(やまい)で死んでしまい、産まずの児(こ)を孕(はら)んだまま棺桶に納(おさ)め、墓に埋(う)められてあったのだった。
「赤児(あかご)を産みたい母の一念(いちねん)が、死してなおこの児に移(うつ)り、お墓の中で産まれてきたのであろう。強い児だ」
「和尚さま、するとこういうことですか。この若いお母さんは、出ないお乳(ちち)の代(か)わりに飴をしゃぶらせようとて、わしの店へ飴買いに来ていたのですか?幽霊(ゆうれい)になって」
「そういうことだの」
「毎晩一文、六晩(むばん)で六文。てことは、死人に添(そ)えられた三途(さんず)の川の渡(わた)し賃(ちん)だったわけだ。こりゃあ貰(もら)えんな。この若いお母さんに返してあげよう」
「それがよかろ。供養(くよう)はあらためて、拙僧(せっそう)がしてやろう」
こう言うて、和尚さんが赤ん坊を抱きあげようとしたら、若い母親の両膝が邪魔(じゃま)をした。
「お前には育(そだ)てられんじゃろうから、わしに呉(く)れ。きちんと育ててやる」
と言うと、両膝がゆるんだと。
和尚に育てられたこの赤ん坊は、のちに大層(たいそう)偉(えら)いご坊様(ぼうさま)になったそうな。
あったといや。
幼い子供がいる身なので、この話を聞くと胸が締め付けられるようになります。( 30代 / 女性 )
むかし、むかし。あるところにおっ母さんと、太郎と次郎と三郎の三人の子供が暮らしておったと。あるとき、おっ母さんが山へ薪を拾いに行くと、山姥が出て来て、おっ母さんをベロッと食うてしもうた。
「子育て幽霊」のみんなの声
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