民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 動物の争いにまつわる昔話
  3. 兎の眼と耳と尾

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

うさぎのめとみみとお
『兎の眼と耳と尾』

― 群馬県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、むかしの大昔。
 ある山に親兎(おやうさぎ)と子兎(こうさぎ)が住んであったと。 

 ある日、親兎が食べ物を見つけに行った。
 行くとき、子兎に、
 「寂しいだろうが、まだ道がよく分からないのだから、家(うち)から出てはいけませんよ」
と言いおいて出て行った。
 そのうちに、つまらなくなった子兎は、家(いえ)の外へ出て行った。
 歩いているうちに、きれいな花がいっぱい咲いている原っぱに出たと。
 いっぱいのきれいな花に、いっぱいのきれいな蝶々(ちょうちょう)がたわむれていて、子兎はすっかりうれしくなった。


 花の中で蝶々を追っかけていたら、蜜蜂(みつばち)がやってきて、ブンブンブンと子兎を誘ったと。
 子兎が蜜蜂を追いかけて、ピョンと跳びついたら、鼻の頭をチクンと刺された。
 あまりの痛さに腰くだけになった。
 ヨロヨロしたら、そこがちょうど穴の辺(へ)りで、石がくずれて、子兎も一緒に穴の中へ転がり落ちたと。

 長い尾っぽの上に、さらに石が落ちてきてはずれなくなったと。 
 あたりは、だんだん暗くなってくるし、蝶々も居なくなるし、さみしくなって、泣いたと。
 親兎が家に帰ってみると子兎がいない。
 あわてて、あっち探し、こっち探しして、ようやく子兎の泣き声が聞こえたと。
 泣き声をたどっていったら、穴に落ち込んでいた。

 
 穴の辺りから両手をのばして、子兎の耳をつかんだと。耳を持って、ぐいぐい引き上げたら、耳はあんなに長くなった。
 親兎がくるまでにあまりに泣いたので、眼(め)はあのように赤くなった。
 力一杯子兎を引き上げたとき、尾に石が乗っていたので、尾はプツンと切れて、あのように短くなったそうな。
 
 いちがポンとさけた

「兎の眼と耳と尾」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

人影花(ひとかげばな)

むかし、あるところに貧乏(びんぼう)な婿(むこ)どんがおって、いとしげな嫁ごと暮らしておったそうな。そのころはまだ鬼(おに)がおっての、ときどき里に…

この昔話を聴く

猿聟入り(さる むこいり)

昔あったと。あるところに爺(じ)さと娘三人とがいてあったと。あるとき爺さが山の畑で種豆(たねまめ)をまいていたら腰(こし)を痛(いた)めてしまった。

この昔話を聴く

貧乏神(びんぼうがみ)

 むかしがひとつあったとさ。  あるところに、貧乏(びんぼう)じゃったが、それは仲のよい爺(じ)さまと婆(ば)さまが暮(く)らしておった。  年越(としこし)の日がきても何一つ食べるものがない。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!