― 群馬県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、むかしの大昔。
ある山に親兎(おやうさぎ)と子兎(こうさぎ)が住んであったと。
ある日、親兎が食べ物を見つけに行った。
行くとき、子兎に、
「寂しいだろうが、まだ道がよく分からないのだから、家(うち)から出てはいけませんよ」
と言いおいて出て行った。
そのうちに、つまらなくなった子兎は、家(いえ)の外へ出て行った。
歩いているうちに、きれいな花がいっぱい咲いている原っぱに出たと。
いっぱいのきれいな花に、いっぱいのきれいな蝶々(ちょうちょう)がたわむれていて、子兎はすっかりうれしくなった。
花の中で蝶々を追っかけていたら、蜜蜂(みつばち)がやってきて、ブンブンブンと子兎を誘ったと。
子兎が蜜蜂を追いかけて、ピョンと跳びついたら、鼻の頭をチクンと刺された。
あまりの痛さに腰くだけになった。
ヨロヨロしたら、そこがちょうど穴の辺(へ)りで、石がくずれて、子兎も一緒に穴の中へ転がり落ちたと。
長い尾っぽの上に、さらに石が落ちてきてはずれなくなったと。
あたりは、だんだん暗くなってくるし、蝶々も居なくなるし、さみしくなって、泣いたと。
親兎が家に帰ってみると子兎がいない。
あわてて、あっち探し、こっち探しして、ようやく子兎の泣き声が聞こえたと。
泣き声をたどっていったら、穴に落ち込んでいた。
穴の辺りから両手をのばして、子兎の耳をつかんだと。耳を持って、ぐいぐい引き上げたら、耳はあんなに長くなった。
親兎がくるまでにあまりに泣いたので、眼(め)はあのように赤くなった。
力一杯子兎を引き上げたとき、尾に石が乗っていたので、尾はプツンと切れて、あのように短くなったそうな。
いちがポンとさけた
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むかしがひとつあったとさ。 あるところに、貧乏(びんぼう)じゃったが、それは仲のよい爺(じ)さまと婆(ば)さまが暮(く)らしておった。 年越(としこし)の日がきても何一つ食べるものがない。
「兎の眼と耳と尾」のみんなの声
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