民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 狐が登場する昔話
  3. 奥方に化けた狐

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

おくがたにばけたきつね
『奥方に化けた狐』

― 愛媛県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、今の道後温泉(どうごおんせん)のそばに、湯月城(ゆづきじょう)というお城があって、河野伊予守道直(こうのいよのかみみちなお)という殿さんがおったそうな。
 ある日、殿さんが狩(か)りに出て帰ってみると、奥方がふたりになっている。
 顔も同じなら声も同じ、姿、しぐさも瓜(うり)ふたつで、
 「わたしがほんとよ」
 「にせものはあちらよ」
と、殿さんに向かって、にっこりほほえむのだと。
 どっちがどうと、見分けがつかん。
 殿さんは、目ぇを白黒させてしまった。

 
 医者をよんで診(み)せると、
 「こ、こ、これは離魂(りこん)ともうして、魂がふたつに分かれる不思議な病でございまするゴニョゴニョ」
と、わけのわからんことを言う。
 カミやホトケにいのってもききめがない。
 いよいよこまった殿さんは、二人の奥方を座敷(ざしき)にとじこめて、ようすを見ることにした。
 腹のすいたところをみはからって、膳(ぜん)を出すと、ひとりの奥方が、耳を、びくびくっと動かし、がつがつと食べている。
 「それ、あれがにせものじゃ」

 殿さんのひと言で、家来(けらい)たちがその奥方をとらえ、庭の杉の木にくくりつけて松葉でいぶすと、コンコンせきをして、古狐が正体をあらわしたそうな。


 「おのれ、狐のぶんざいでようもこのわしをだましおった。こともあろうに、奥の姿に化けるとはかんべんならぬ。火あぶりにしてくれる」
 殿さんは、こうどなりつけた。
 家来たちが火あぶりの用意をしていると、何百匹もの狐が、どこからともなくぞろぞろあらわれ、頭をすりつけてたのんだと。
 「かんにんして下さい。この狐は、四国にすむ狐の中で最もとうとい狐です。もし殺したら、ご領内(りょうない)に、きっと悪いたたりがあります」
 あまり口ぐちにたのむので、殿さんは許(ゆる)してやったそうな。
 奥方に化けたとうとい狐は、「もうこれからは四国にはすまぬ」と、わび証文(しょうもん)を残し、みんなを連(つ)れて立ち去って行ったと。

 四国に狐がおらんようになったのは、このときからなんじゃそうな。 

  

「奥方に化けた狐」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

おはなしをよみたい( 10代 / 女性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

爺ちゃと蟹(じんちゃとかに)

むがしがあったぞん。あるどこに一人の爺(じん)ちゃがいてあった。ある日、山へ行く途中、童子(わらし)達が蟹(かに)を捕っていじめているのを見て、可哀…

この昔話を聴く

ペーロンの由来(ぺーろんのゆらい)

長崎では、七月の最後の日曜日、決まって港や深堀(ふかぼり)、三重(みえ)などの村々から、ペーロンのドラの音がひびいてきます。一隻(いっせき)の和船に、三、四十名の若者が、手に手にカイを持って乗り込み、勇(いさ)ましいドラの音にあわせて漕(こ)ぐのです。

この昔話を聴く

鶯の内裏(うぐいすのだいり)

昔あったけど。昔あるところにな、お茶屋あったけど。きれいだ姉さんが毎朝のように五文価(ごもんあたい)ずつお茶買いに来るじょんな。番頭は不思議に思て、…

この昔話を聴く

現在883話掲載中!