― 青森県 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志
再々話 六渡 邦昭
むかし むかし。
北国の村に、子供のいない爺さまと婆さまが住んでおった。
冬のひどい吹雪(ふぶき)の夜のこと、
「ごめんなされ、ごめんなされ」
と、外で声がする。
爺さまと婆さまは、こんな夜にだれだろうと思いながら戸をあけてみた。
すると、このあたりでは見たことのない女が小さな女の子を連れて立っていた。ふたりとも真っ白に雪をかぶっている。
挿絵:福本隆男
「おーお、かわいそうに。道にでも迷(まよ)ったか」
「さぁさ、つめたかろう。入ってあったまれや」
爺さまと婆さまが思わず口ぐちに言うと、女は消えいるような声でたのんだと。
「お願いです。どうかこの娘(こ)をしばらくの間(あいだ)あずかってくだされ」
「あずかってもよいが、おまえさんはいったいどうなさる?」
爺さまは問いかえしながら女の子をだきあげた。
そうしたら、とつぜん、目もあけられんほどビューと吹雪いて、女の姿がかき消えてしまったと。
そんなことがあってから一月(ひとつき)、二月(ふたつき)とすぎたが、女は娘(むすめ)をむかえにこなかった。そのうちに娘も爺さまと婆さまにたいそうなついてしもうた。
子供のない二人は、その娘を我が子のように大切に大切に育てたんだと。
その娘は、大きくなるにつれ、色の白い美しい娘になっていった。けれども、この娘はどういうわけか風呂(ふろ)に入るのが大嫌い(だいきらい)であった。いくらすすめても風呂に入ろうとしない。
あるとき、爺さまと婆さまは、こんな美しい娘は風呂に入れてみがけばもっともっと美しくなるにちがいないと、いやがる娘をむりやり風呂に入れた。
ところが、いつまでたっても娘は風呂からあがってこない。お湯の音もさっぱり聞こえん。
「どうした、あんまり長湯(ながゆ)をするとのぼせるぞ」
爺さまが声をかけたが何の返事もない。
だんだん心配(しんぱい)になって、爺さまと婆さまが風呂をのぞいたと。
風呂の中にはだぁれもいなかった。
「おーい、おーい」
と娘をよびながら、二人がお湯の中を見ると、そこには、娘がいつも髪(かみ)にさしていた赤いくしが、あぶくといっしょに浮いていたんだと。
どんとはらい。
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むかし。相模湾の三ツ石の沖にサメの夫婦が住んでおったと。夫婦は、ここへ漁師の舟が来ると追い返しては、子ザメを守っておったと。「三ツ石へ行くでねぇ。主のサメにおそわれるぞ」と、漁師たちは、この沖を地獄のように恐れて近寄らなかったと。
「雪娘」のみんなの声
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