民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 動物の争いにまつわる昔話
  3. 尻尾の釣り

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

しっぽのつり
『尻尾の釣り』

― 青森県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 
 むかし、あるところに、猿とかわうそが棲(す)んでいたそうな。
 猿は、かわうそがいつも魚をとってはおいしそうに食っているのを見て、うらやましくてたまらない。
 ある日、猿はかわうそに、
 「かわうそどん、どうしたらそんなに魚がとれるのかい」
と、聞いた。
 かわうそはまじめな顔をして教えた。
 

 
尻尾の釣り挿絵:福本隆男
 
 「あの川に氷が張ったとき、氷に穴をあけて、尻尾をさしこんでおけば魚はひとりでに食いついてくるさ。そのとき尻尾を引っ張れば、なんぼでもとれらぁね」

 『これはいいことを聞いた』と、猿は、その夜早速(さっそく)氷の上に座って氷に穴をあけ、尻尾をさし入れて魚の食いつくのを待った。

 
 しばらくすると、猿の尻尾をびくらびくら引っ張るものがある。
 「さあ、雑魚(ざこ)が一匹くいついた」
と、喜び

 小っさい雑魚は あっちゃいけ
 大っきい魚は こっちゃこい

と、うたいながら、なおも、じっとしていたそうな。すると、今度は前よりも痛く、びくびくっと尻尾を引いた。
 「今度は二匹くいついた」
 「今度は三匹くいついた」
 猿は、尻尾が水の中で凍っていくのも知らないで、引っ張られるたびに勘定(かんじょう)しながら待ったと。
 

 
 やがて、川には厚い氷がすきまなく張り、猿の尻尾も凍りついてしまった。
 「さあ、今度は上(あ)げよう」
と、猿は尻に力(ちから)を入れて「うん」と引き上げたが、尻尾はぴたりと食いついて離れない。

 「ははあ、こりゃ大きな魚だわい」 と、喜んで、

  ますがついたか やんさあ
  さけがついたか やんさあ

と、うたいながら顔を真っ赤にして引き上げた。
 

 
 が、ちょこっとも動かない。
 さすがに猿もあわてて

  ますもいらない のいてくれ
  さけもいらない のいてくれ

と、泣きうたうたって、力いっぱい「うん」と引き上げたと。
 そしたら何と、猿の尻尾は、根元(ねもと)からプッツリ切れてしまったそうな。


 猿の尻尾が短かく、顔は赤く、尻もただれて赤くなったのは、こんなことがあったからだそうな。

 とっちぱれ
 

「尻尾の釣り」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

悲しい

猿のしっぽが取れるのが痛そう。( 10歳未満 / 男性 )

悲しい

猿のしっぽが取れるのが悲しい ( 10歳未満 / 男性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

あさこ、ゆうこ(あさこ、ゆうこ)

むかし、あるところに山があって、東側と西側のふもとには小さな村があったそうな。二つの村は、ささいな争い事が因で、もう永い間往き来をしていなかったと。

この昔話を聴く

狐と熊(尻尾の釣り型)(きつねとくま おっぽのつりがた)

 むかし、むかし。  ある冬の寒い日に、漁師(りょうし)が氷に開けた穴から釣(つ)り糸をたれて、数匹(ひき)の魚を釣り上げたと。  「どれ、寒くもあるし、腹(はら)もすいたし、こんなところで、帰るとするか」 というて、橇(そり)に魚を乗せて帰ったと。

この昔話を聴く

大沼の主と娘(おおぬまのぬしとむすめ)

むかし、あるところに代々続いた大層な長者があったと。あるとき、長者はふいの病であっけなく死んだと。あとには嬶様(かかさま)と娘が残された。ある朝、嬶…

この昔話を聴く

現在886話掲載中!