つるとばくちこぎ
『鶴とばくちこぎ』
― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
採集・再話 今村 泰子
整理・加筆 六渡 邦昭
むかし、あるところにバクチ打ちいたと。
毎日、毎日バクチ打ってなんもかも無くなってしまったと。しまいに自分の嬶(かか)を売りに行ったと。して、
「何時何日(いついっか)の日に受け取りに来る」
って、書付(かきつけ)持って帰ったきゃ、それ道で落としてしまったと。
バクチ打ち、家さもどって見たども、嬶居ねば不自由で不自由で、どうにもこうにもならねくて、銭こ都合して、嬶受け取りに行ったと。したきゃ、
「とうに書付持って来た人に連れられて行った」
とて、居ねかったと。
「だれ連れて行った」
って聞いたけ、
「鶴(つる)連れて行った」
と、話したと。
嬶は鶴の家で、キースカ、カタカタ。キースカ、カタカタて、鶴の毛で機織(はたお)ってたと。そこさ夫訪ねて行ったけぁ、
「よく来て呉(け)た」
とて、大した喜んだと。
だども、今に鶴戻って来れば、鶴にかかって殺されると思って、嬶、その父(てて)を天井の梁(はり)さ隠(かぐ)したと。
夜間(よま)になって、鶴、戻って来たと。
二人して炉端(ろばた)さ寝まったきゃ、鶴、
「今日、人来たな」
って、いうた。
「なんも来ねぇ」
「ンにゃ、人来た」
「なんも来ねぇ」
「おれの家にだばしゃ、人一人来れば一つ咲く、二人来れば二つ咲く花ある」
というので、嬶だまってたと。
鶴、今度ぁ、
「はしの下の、でぁこんぼうー」
って、呼ばったきゃ、大っき蛙(ぎあろ)、ドーン、ドーンとはねて来て、
「何御用(ごよう)ですか」
って、座った。鶴が、
「今日、家に不思議(ふしぎ)あるため、八卦(はっけ)おけ」
って、いったら、蛙、八卦おいて、
「炉の自在鍵(じざいかぎ)のはなに縄(なわ)かけて、結びこぶずっぱりつけて、火 ノンノンと焚(た)け」
って、いったと。
挿絵:福本隆男
したきゃ、天井の梁さ隠れていた父(てて)、熱いのと煙(けむ)いのとで苦しくてくるしくておられなくなり、自在鍵のはなにかけられた縄をつたってツルツルとおりてきたと思ったきゃ、炉の中さドンと落ちて、死んでしまったと。
とっぴん ぱらりのぴ。
「鶴とばくちこぎ」のみんなの声
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