― 新潟県 ―
語り 井上 瑤
再話 水沢 謙一
整理 六渡 邦昭
とんと昔があったげど。
嘘(うそ)こきさざなみは、いつも嘘ばっかり言うているので、地獄(じごく)のえんま様が、
「嘘こきさざなみは娑婆(しゃば)におくと、為(ため)にならんすけ、地獄へつれてこい」
と鬼(おに)どもに言いつけたと。
正月十六日に赤鬼と青鬼が火の車ひっぱって、さざなみを迎(むか)えに行った。正月十六日は地獄の釜(かま)のふたが閉(と)じられる休みの日で、罪人(ざいにん)が休みで家に帰っている日だから、その日は罪人がそこいらにウヨウヨといて、火の車のじゃまになって、どうしようもねかったと。
赤鬼と青鬼がさざなみの家へ行ったら、さざなみは、他の家へ嘘こきに遊びに行っていた。その家へ行って、
「さざなみは居るか」
「居た」
「お前はこの火の車に乗って、地獄へ来い。迎えにきた」
と言うた。
さざなみはえんま様の前へ連れて来られた。
「お前が嘘こきさざなみか」
「はい」
「お前は嘘ばっか言うているすけ、舌(した)を抜(ぬ)いてしまう。その釘(くぎ)抜きをよこせ」
「えんま様、舌を抜くのをちっと待ってもらいたい。嘘のこき治めに、もう一ぺんだけ嘘をつかしてもらいたいども、どうですか」
「どうせお前の舌を抜くんだすけ、もう一ぺんなら言うてもよい」
「えんま様、おらの言う嘘が、嘘でなく本当のことだったらどうします」
「お前の嘘が、もし、本当であったら、また娑婆へ帰してやるこて」
「それでは言うど。
えんま様の舌を、おらが抜いてやる」
「ほお、さざなみや、でっこい嘘を言うたな」
えんま様おかしがって舌を出して笑った。その舌を、さざなみは釘抜きではさみ、えんま様の腹に足を掛(か)けて、チョコチョコと抜いたと。
「さあ、約束通り、おらは娑婆に帰る」
と言うて、罪人台帳(ざいにんだいちょう)を墨(すみ)で真っ黒けに塗(ぬ)ってから戻ったと。
これで いっちこさっけ、どっぺん、鍋の下ガラガラ。
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昔、豊後(ぶんご)の国、今の大分県大野郡野津市に、吉四六(きっちょむ)さんという面白い男がおった。頓智働(とんちばたら)きでは、誰一人かなう者がないほどだったと。
昔、昔。雨コ降ってら日、一人の婆、山菜のミズ背負って町さ売りに歩いてたど。「居だか。ミズ えかったべしかあ。採りたてでンめぇどぉ」 って、家々まわったきゃ、「今日、まんず間に合ってらしじゃ」どて、断られたど。
「嘘こきさざなみ」のみんなの声
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